2018 Fiscal Year Research-status Report
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15K03213
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笠原 武朗 九州大学, 法学研究院, 教授 (90346750)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 組織再編 / 瑕疵 / 効力 / 会社分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、昨年度に引き続き、瑕疵ある組織再編の効力に関連する諸問題についての研究を行い、その成果の一部を公表した。 特に中心的に研究を行ったのは、会社債権者を害する濫用的な会社分割について、債権者保護を図るために会社分割(あるいは、会社分割の結果として生じる権利義務関係の変動)の効力をどう考えるべきかという問題である。会社分割の債権者のうち、債権者異議手続の対象外とされている金銭債権者については事後的救済を認める判例や議論の蓄積があり、法改正により一定の対処がなされているところであるが、債権者異議手続の対象であるか否かを問わず、双務契約の一方当事者等、会社分割による影響を受ける債権者には多様な者があり、それらの者の保護が、会社分割の利便性との関係で、どのような形で図られるべきかにはなお不明な点が多い。平成30年度の研究では、会社分割の効力として生じる権利義務関係の変動を事後的に一部否定するという手法を中心に、そのような問題に対する考察を深め、1つの素材として、会社分割による承継の対象とされた賃貸借契約の賃貸人(継続的契約上の債権者)の信義則による保護が問題となった最決平成29年12月19日民集71巻10号2592頁についての分析を公表した。そのような債権者は債権者異議手続の対象と考えるべきであるが、それでもなお、事案によっては信義則等による事後的救済を否定すべきではないというのがその結論である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本法上の問題については様々な問題を検討することができており、平成31年度も引き続き同じように研究を進めていければよい。 しかし、当初考えていたよりも、比較法的考察の材料となるべき外国法の研究に時間を割くことができず、具体的な成果物を公表することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
日本法上の問題については、組織再編による会社の契約相手への影響とそれらの者の保護について研究を進める。とりわけ、承継対象を恣意的に選別できる会社分割について、本研究の課題である効力問題による対処と他の方法による対処とを組み合わせた全体像について中心的に研究する。 外国法については、引き続き、研究課題に関する米国法の全体像を把握・描写できるように文献資料の分析を進める。
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Causes of Carryover |
外国書籍の購入額が予定より少なくなった。また、他機関支給による出張(研修)と兼ねて資料収集や研究会への出席、研究打ち合わせを行うことが多かったため、旅費が予定より少なくなった。 (使用計画) 書籍の購入、資料収集や研究会出席のための旅費に充てる。
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Research Products
(1 results)