2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03215
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
植本 幸子 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (20423725)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 擬制信託 / 信託法理 / 代償物 / 代位物 / 準事務管理 / 利得の吐き出し |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における信託制度は、合意によって設定される明示信託が念頭に置かれ導入されている。しかし、信託法理の根幹は、合意のないところでも課されうる「責任」にこそある。そこで、本申請研究では、日本の民法典の体系に沿った、所有権を主とする物権を根拠とする責任、合意に基づく責任と過失に基づく責任に加えて、信託法理による説明原理を一般化することを目指す。そこでは、合意によって設定される「明示信託」にも留意しつつ、法により信託的な責任の課される「擬制信託」を中心にして「信託法理」全体を捉え、従来の義務の説明根拠や体系の枠のみによっては説明しきれなかった事案における、公平性や妥当性を再検討する糸口を提供し、より良い民事法秩序を模索し打ち立てることが目的となる。 そのような信託法理の重要な機能としては、優先的取り戻しの機能に並び、損失にとどまらない利得の吐き出し機能がある。既に、損失にとどまらない利得の吐き出しについては、日本において様々な研究がある。そのメインとしては、準事務管理の理論とそれを取り巻く議論状況がある。そこで、本年度においては、信託法理の検証の1つとして、日本における準事務管理を中心として発達した議論状況について考察を行った。結論として、準事務管理を取り巻く議論には代償理論が混在している。少なくとも、事務管理と準事務管理両方を包摂する一般法理として、価値の反映ないし転化である代償物理論の明記を行い、故意や義務違反による制裁理論との区分を明瞭化させることが望まれる。 平成28年度においては、このような代償理論と信託法理の関連についての考察を推し進め、さらに、物権秩序との関係で信託法理の可能性についても研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度についてはアメリカ法の議論を形にすることはできなかったが、28年度以降に予定されていた日本法の分析を先に行うことができた。そのことにより、初年度に予定されていたアメリカ法の重要な定義の再検証に関連して必要な重要な事柄と、民法秩序における全体の骨格について必要な事柄についての具体的な視点と確信を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、このような代償理論と信託法理の関連についての考察を推し進め、さらに、本年度の不当利得法の秩序とは少し視点を変えた物権秩序との関係で信託法理の可能性についても研究を進める予定である。物権法秩序については制度のあり方が広すぎてまとめきれない可能性があるが、その場合には、検討対象とする州を特定することにより、確実な成果を出すという対応策による。
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