2016 Fiscal Year Research-status Report
商品・サービス・事業者の信用や評判に係る法制の体系的研究
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15K03219
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 耕志 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00344648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒田 泰土 上智大学, 法学部, 教授 (30334288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 信用 / 評判 / 認証 / ゲートキーパー / デュー・ディリジェンス / 開示 / 商品等表示 / 知的財産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、商標法や不正競争防止法等の知的財産法の立場、ならびに、商法・会社法や金融商品取引法等の企業法の立場から、優れた商品やサービスを提供する者、ならびに、優れた事業を営む者のインセンティブのために信用や評判が有効に機能しうる法制度を模索するものである。 本研究は、商品、サービスおよび事業者の信用・評判に係る法制度について、「①認証者による認証サービスに支えられた下で、優れた商品やサービスを提供する者、優れた事業を営む者のインセンティブのためにそれらの信用や評判が発展し、確立され、それが有効に機能する市場環境が整えられる」、さらに、「②事業者自らの努力で発展し、確立された信用や評判は、他者に不当に利用されないように保護されなければならず、もって複数の事業者間で公正な競争が図られる」という考察の枠組みにより体系化が図られるべきというものである。この考察の枠組みについて、研究代表者と研究分担者が第一次的に比較法研究を実施することで研究を進めている。 これまでの研究期間においては、上記にかかる多くの制度や理論を調査し、それらを機能論的に体系化し、その上で、具体的な問題やあるべき規範との関係に当てはめて考察し、上記①および②の体系化の重要性を明らかにしてきた。その一例が、企業のコーポレート・ガバナンスと認証(機関)の関係であり、また異なる側面として、様々な認証機関の体制の相違と有効性の比較検討である。さらに、知的財産権(その侵害)と不正競争防止法の関係を具体的論点、事例に基づき考察しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、「研究概要」で記す考察枠組①の研究に関して、第一に、企業のコーポレート・ガバナンスと認証(機関)の関係について、近年、企業価値向上のためにコーポレート・ガバナンス・コードが策定され、各企業はこれに応じた対応が求められるようになっているが、金融商品取引法の開示規制の観点から見るならば、開示情報の充実のみならず真実性・正確性のためにコーポレート・ガバナンス・コードは意義づけられるべきである。そこでは、評価、認証を行う専門家・認証機関が果たす役割が重要となり、とりわけ、専門家・認証機関が行うデュー・ディリジェンスの意義、および、その実施主体、対象の明確化が重要となることを考察してきた。 第二に、様々な認証機関の体制の相違と有効性について、ISO、信用格付機関、投資銀行等、社会に存在する様々な認証機関およびそのサービスを比較検討し、認証に係る審査(デュー・ディリジェンス)の実務・程度の相違、および、認証サービスの有効性のために考慮されうる要素を類型化して考察してきた。 次に、「研究概要」で記す考察枠組②の研究に関しては、競争企業の顧客等への知的財産権侵害に係る警告文書の頒布が不正競争防止法2条1項15号所定の信用毀損行為に該当するか否かについて研究を行っているところ、わが国では、侵害が否定されれば、警告が知的財産権の行使として正常であったか否かを考慮せずに不正競争を成立させる見解がきわめて有力であるところ、これまでに行った比較法調査によると、フランスの裁判例は、不正競争の成否について警告の不当性や競争企業を誹謗する要素に焦点を当てていることが判明した。同国の学説等の一層の調査を通じて、彼我の相違の原因を探る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に実施する研究では、前年度までの調査・研究を踏まえ、本研究の仕上げとなる考察を進めていく予定である。また、平成29年度においては、研究代表者および研究分担者それぞれが論文としての公表を行い、また、諸大学の研究会などで研究成果(全部または一部)の発表を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究では、第一次的に比較法研究のための文献等の入手が主だった資金使途となるが、当年度の研究の進行にあわせ随時文献等の発注を行ったため、一部の文献入手が年度をまたいでしまうことになった。 なお、研究の進捗状況に遅れは生じていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度(平成29年度)は、引き続き前年度からの研究を進め、成果を発表する等研究を発展させる予定であり、現時点において当初予定の通りの使用額となる見込みである。
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Research Products
(6 results)