2017 Fiscal Year Research-status Report
錯誤、詐欺、不実表示および説明義務違反に関する法制度間の適用関係
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15K03222
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
新堂 明子 法政大学, 法務研究科, 教授 (00301862)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 過失不実表示 / 過失不法行為 / 不実告知 / 割賦販売法 / 消費者契約法 / 名義貸し |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)東京地判平28.7.14判タ1437号158頁(熊野町ジャンクション火災事故判決)の評釈において、被害者が交通事故によって損害を被ると同時に、同一の原因によって道路法の規定に基づき原因者負担金およびこれに対する延滞金の支払を受けた場合における、不法行為に基づく損害賠償請求権と原因者負担金等との間での損益相殺的な調整の範囲および方法を検討した。 (2)最判平成29年2月21日民集71巻2号99頁の評釈において、名義貸し事例に対する、割賦販売法上の抗弁対抗規定(平成20年改正前の旧割賦販売法30条の4、平成20年改正後の新割賦販売法35条の3の19)の適用の可否、および、不実告知取消規定(新割賦販売法35条の3の19、消費者契約法4条および5条)の適用の可否を検討した。 名義貸しの典型例は、資金繰りの苦しい販売業者が、あっせん業者から不正に金融を得る目的で、購入者に対し、「こちらが支払をするので、そちらの支払負担は不要であり、絶対に迷惑はかけないので、名義を貸してほしい。」(①)と告げ、購入者がこれを承諾して、なされるものである。これに対し、本件の特徴は、②ローンが組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり、高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在すると告げた上で、①支払負担は不要である旨を告げた点にある。 本判決は、上記規定の適用可否を決するに当たって、名義貸し事例には様々な態様のものがあり、それらの様々な態様や事情(①②とも)を取り込んで判断することを認めた点に意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、錯誤、詐欺、不実表示および説明義務違反に関する要件論と効果論の究明、さらに、上記諸制度の関係の究明を目的とする。 (1)平成29年度は、イギリス法における錯誤の要件論および効果論、さらに、解釈論および立法論についてまとめる予定であったが、錯誤に隣接する不実表示(イギリス法)および不実告知(日本法、割賦販売法、消費者契約法)についてまとめた。そこで、平成30年度は、積み残している錯誤について、まとめていきたい。 (2)平成29年度は、債権法改正に関連して、第三者のためにする契約の要件論、効果論の概要をまとめた。そこで、平成30年度は、これをまとめ、公表にこぎ着けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、錯誤、詐欺、不実表示および説明義務違反に関する要件論と効果論の究明、さらに、上記諸制度の関係の究明を目的とする。 (1)イギリス法における錯誤の要件論および効果論、さらに、解釈論および立法論についてまとめる。 (2)債権法改正に関連して、第三者のためにする契約の要件論、効果論および改正の内容をまとめる。上記諸制度との関連性を見極めつつ、検討を進める。とりわけ第三者のためにする契約法と不法行為法との交錯について解明する。 (3)最終年度であるため、上記諸制度の関係を究明し、また、契約責任と不法行為責任との関係を探究する。
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Causes of Carryover |
購入予定雑誌が合併号となり、価格が上がったので、これを3月購入から4月購入に変更したため。
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