2015 Fiscal Year Research-status Report
株式会社法における少数株主の締め出し制度-ドイツ法との比較
Project/Area Number |
15K03229
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福島 洋尚 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70267962)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 少数株主の締め出し / キャッシュ・アウト / 完全子会社化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、株式会社法における締め出しを対象とする。平成17年の会社法制定以降、MBO取引や非公開化取引において、全部取得条項付種類株式を用いた締め出しが広く行われるようになり、裁判を通じた多くの紛争例が現れている。現在では、紛争の類型も多様化している。株式会社法における少数株主の締め出しは、経営者によるMBOや非公開化取引、さらには完全子会社化の場合に一定の必要性が認められるものの、少数株主の立場からは、自己の意思にかかわらず株主としての地位を喪失を伴う結果となるため、不測の不利益を被るおそれがあり、深刻な紛争に発展する可能性もある。 本研究は、同様に締め出しの手法が複数存在するドイツ法との比較を通じて、紛争の予防およびあるべき紛争の解決を探るものである。平成27年会社法改正により締め出しの手法が広がったことから、今後も新たな紛争例が出現することが予想される現在、このような研究はきわめて重要であると考えている。また、これまでわが国における締め出しの問題についての研究は、合併の手法を用いたアメリカ法を対象とした比較法研究が多く、平成17年会社法制定以降は、全部取得条項付き種類株式の利用にかかるもの、価格決定の問題を取り上げたものなどが多く、締め出しにかかわる法制度を横断的に検討したものは見当たらず、平成27年会社法改正により新たな締め出しの手法として創設された特別支配株主の株式等売渡請求の制度と類似の制度を持つドイツ法を対象とした研究も、筆者のものを含めてわずかしかない。その意味でも本研究には意義が認められると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究実施計画に基づき、株式会社における締め出しをめぐる紛争例を類型化するため、個別事例の収集検討に努めた。また、研究の基礎ともなるドイツ株式法における締め出し制度についても、かつての研究成果以降の裁判例、議論の蓄積を確認するため、もっぱらドイツ株式法における2002年以降の文献の調査および収集にも努めている。 併せて、今年度は平成27年会社法改正により、新たな締め出しの手法として利用が検討されている、株式の併合を利用した締め出しにつき、日本法におけるこれまでの理解、平成27年会社法改正をめぐる議論に加え、改正法の下での解釈の可能性などを探り、研究成果の一端とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成27年度に収集したドイツ株式法における文献、裁判例の分析を進めるほか、並行して存在するドイツ企業買収法における締め出し制度について、同様に文献の調査、収集を進めていく。 また、わが国における締め出し制度が多様化する中で、改正会社法において新設された制度や全部取得条項付種類株式の利用に代わって主流となっていくことが予想される株式の併合を利用した少数株主の締め出しにつき、新たな紛争例が出現すれば、その都度検討の対象とすることも併せて行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、大きく2つあり、1つは、ドイツ株式法のコンメンタール(注釈書)の一部につき、刊行時期の遅れが生じたという事態があり、当該年度に希望する文献が購入できなかったという点である。もう1つは、パーソナルコンピューターの購入につき、予算額と希望する性能との間に若干の差があり、年度を繰り越して購入した方が、効率的なデータ処理が可能であると考えられたからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の2つの点は、いずれも研究を進めていく上での誤差の範囲であると考えており、平成28年度中には、ドイツ株式法の文献も入手が可能であると考えられるほか、パーソナルコンピューター、プリンター等の購入についても平成28年度中の早い時期に行いたいと考えている。いずれも時期的な誤差に過ぎず、使用計画の本質的な変更を伴うものではない。
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