2016 Fiscal Year Research-status Report
デジタル化社会における民事訴訟周辺ベンダー育成のための法的環境整備に関する研究
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15K03231
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
林 昭一 同志社大学, 司法研究科, 教授 (80368480)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | eDiscovery / 証言拒絶権 / 文書提出命令 / 証明妨害 / 証拠保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究に引き続き、米国民事訴訟手続におけるeDiscoveryベンダーの手続関与に関連した裁判例、研究論文、そして各種のレポートの調査・検討を行った。この作業と並行して、大陸法系諸国のうちドイツ民事訴訟手続における民事訴周辺訟ベンダーの訴訟関与の動向についても、同様の調査・検討を行った。具体的には、eDiscovery手続または証拠収集、保全、および提出の各手続段階における情報の探索、法的に求められる開示情報と秘匿情報の峻別、または、裁判所の開示命令への対応等に際して、これらのベンダーが手続にどのように関与し、手続上どのような役割を果たすかということについて、わが国の現行民事訴訟法制または民事訴訟実務との比較をまじえて、検討を行った。 これらの検討の結果を踏まえて、研究論文の作成に着手し、その一部として、これらのベンダーが情報の保持、および開示主体となる場合に生じうる諸問題の前提と位置づけられる、情報(文書および準文書)の「所持」および「所持者」概念についての理論的考察を行い、その成果を研究論文として公表した。あわせて、司法書士が簡裁訴訟代理人となる場合の証拠保全手続における代理権の範囲と、同手続におけるデジタル・データの保全のあり方についての考察を行い、その成果を日本司法書士連合会滋賀県支部研修会において、招待講演として発表した。 これらの基礎理論の研究は、本研究課題の前提問題を明らかにするということだけでなく、民事訴訟法学においてこれまで十分に論じられてこなかった情報の所持者による手続への関与のあり方について新たな視点を提供するものであるといえ、民事訴訟法理論の基礎的研究としての意義も認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を達成するための前提となる基礎的研究として、本年度は、前年度に引き続き、民事訴訟手続における秘密情報の探索、保持、および開示に関する比較法制研究を中心に行った。主として、大陸法系諸国の基礎理論の分析、および検討に基づいて、民事訴訟における秘密情報の探索、保持および開示の際の民事訴訟周辺ベンダーの関与のあり方に関する一定の指針を提示するなどの成果を得ることができたものと思われるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、研究課題の前提となる基礎理論についての研究を先行して実施したため、前年度と本年度において予定していた海外実地調査を延期することとなった。このことは、当地でのヒアリング等の実地調査を行う上で、現在におけるわが国、および該当国の基礎理論の到達点をより明確にしておいたほうがよいとの判断による。したがって、次年度は、比較法制研究の成果を順次、発表するとともに、海外実地調査に基づく研究を踏まえた、研究成果のとりまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、主として、本研究課題を達成するための前提となる文献調査研究を、所属機関のほか国内における図書館において実施した。そして、この中には、次年度に行う予定の調査も含まれている。したがって、前年度と本年度において予定していた海外実地調査のための旅費および実地調査結果をまとめるための人件費等を使用しなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度に引き続いて文献の調査研究を行うことに加えて、前年度および本年度に予定していた海外実地調査を実施することになる。そのため、海外実地調査のための旅費および実地調査結果をまとめるための人件費等として、次年度使用額を充当する予定である。
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