2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03234
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
久保 寛展 福岡大学, 法学部, 教授 (70368984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 格付機関 / ゲートキーパー / 資本市場 / 民事責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究実績としては、主として格付機関の歴史的生成過程を解明できたことにある(「格付機関の歴史的生成過程」福岡大学法学論叢220号575頁以下(2016))。EUの格付機関に対する民事責任の問題を扱うにあたり、本研究は、いわば基礎的研究として位置づけられるものであり、現在の主要な格付機関であるMoody's、S&PならびにFitchの3社がどのような歴史的経緯をもって出現したのかについて、1800年代以降の生成過程の検討を行うことができた。その後、現在は、取り組むべきテーマとして交付申請書にも記載したところであるが、格付機関に対する民事責任の追及に際しての国際管轄の問題が残されていることから、当該テーマに従事している最中である。本年度は、もっぱらこの問題を扱い、たとえばドイツの投資家がアメリカの格付機関に責任を追及できるかなどの問題について、EUならびに主としてドイツの議論を参考に解明したいと考えている。なお、昨年4月に「EU法における格付機関の民事責任規制の法的根拠」同志社法学382号305頁以下を公表でき、これによって現在のEUの格付機関に対する民事責任規制の枠組みについても解明できたほか、関連問題として、「ヨーロッパ資本市場同盟構想における中小企業の資金調達の多様化および簡易化措置」福岡大学法学論叢221号1037頁以下(2017)も公表できた。もっとも、これまでのハンブルクのマックス・プランク研究所での調査により、比較法としてイギリス、フランス、イタリアでの議論も発見できたことから、時間が許す限り、さらにこれら各国での議論も併せて検討を試みたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、すでにEU規則における格付機関に対する民事責任規制の枠組みを解明できたことから、残された課題としては、主として①格付機関の歴史的生成過程と②国際管轄の問題が存在したところである。当初、歴史的生成過程を検討するにあたっては、参考になるべき資料不足が懸念され、その分、時間も要すると考えていたが、これまでドイツのハンブルクにあるマックス・プランク研究所を大いに活用しかつ調査できた結果、主要文献として「Berghoff, Marketerschließung und Risikomanagement, VSWG 92 (2005), S. 141 ff.」を発見することができた。この文献をもとに研究した結果、さらなる資料等の発見もあり、研究がスムーズに進捗し、成果として公表できた結果、おおむね順調に進展できたという結論にいたった。なお、国際管轄の問題についても、ある程度の資料を収集できたことから、現在、研究に従事しており、他のEU加盟国での議論も併せて、成果の公表に向けて努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、これまで本研究の主要な資料ならびにテーマの発見は、主としてハンブルクにあるマックス・プランク研究所を利用できたことが大きい。当研究所では、各国の主要な文献が収蔵されているだけでなく、著名な研究者も在籍していることから、本年度も当研究所を活用して、最終年度ではあるが、資料収集や意見交換を実施する。とりわけ当研究所のLeyens研究員は、まさに研究分野が重なるところもあるので、場合によっては彼の意見も参考に、研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
ドイツへの出張(マックス=プランク国際私法・外国私法研究所)旅費を大幅に削減でき、また収集できる資料については、当研究所での閲覧・謄写により確保できたものもあることから、その余剰分が未使用額として発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後も格付機関や資本市場法に関係するドイツの最新の研究書やコンメンタールが出版されることから、余剰分はその購入費に充てるとともに、本年度も上記の研究書にて研究する予定であるので、その滞在費に充てることとする。
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Research Products
(5 results)