2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03234
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
久保 寛展 福岡大学, 法学部, 教授 (70368984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 格付機関 / 民事責任 / 国際裁判管轄 / 利益相反 / ゲートキーパー |
Outline of Annual Research Achievements |
格付機関の法的諸問題に関して、これまで「格付機関の役割と民事責任論」というテーマで取り組んできた。研究の目的では、格付機関の民事責任の根拠を明確にしたい旨を論じたが、全体としては、国際管轄の問題と利益相反の問題を扱うことができた点に本年度の成果を強調できるように思われる。すなわち、成果として特筆できるのは、第一に、現在、ヨーロッパで構想されているいわゆる「資本市場同盟」での格付機関規則の位置づけを明確にできたことである。市場濫用規則等とともに、資本市場同盟でも、本規則は重要な地位を占めるものである。第二に、格付機関に対する損害賠償の訴えの国際裁判管轄の問題である。ここでは、EU法およびドイツ法(とりわけ民事訴訟法)の観点から、格付機関の責任追及の可能性とともに、実際に裁判所で問題になったフランクフルト上級地方裁判所2011年11月28日判決も検討した。その結果、ドイツ法では、外国の格付機関の主たる財産がドイツの裁判所の管轄区域内にあり、かつ当該訴えが十分な内国関連性を有する場合には、当該格付機関に対する投資家の損害賠償の訴えについて、ドイツの裁判所が土地管轄および国際裁判管轄を有するとの結論にいたった。第三に、格付機関の役割と法的規制の問題である。EU法およびドイツ法の観点から、とりわけ発行者支払モデルに内在する損害賠償責任以外の利益相反等の問題を扱うことができた。ここでは、ローテーションシステムの運用や内部統制システムの構築義務のように、当該問題への法的対応がどのように講じられているのかを明らかにすることができた。 以上のように、今年度は、主として3つの問題点を扱い、公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、最終年度でもあったことから、とりわけ残されていた課題(国際裁判管轄と利益相反規制の問題)に集中的に取り組むことができ、最終的に論文として成果を公表できたことから、おおむね順調に進展しているものと判断した。もっとも、現在、オーストリア法において格付機関の専門家責任の追及可能性が議論されていることを発見したことから、当該問題にも精力的に取り組むことができるよう準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、オーストリア法において格付機関の専門家責任の追及可能性の問題が議論されていることを発見したので、まず、この問題を明らかにすることに重点を置くこととする。これによって、一通り、全体的な考察を終了できたので、これまでの成果を体系立てて整理し、一冊の学術書の形に仕上げることができればと考えている。次に、これを節目として、金融資本市場の「ゲートキーパー」の観点から、助言会社や監査人等の、格付機関以外の他のゲートキーパーについての責任問題にも派生して研究を継続および推進させていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は、昨年末に病気を患い、入院を余儀なくされたためである。そのため、本来、予定していたドイツのマックス=プランク外国私法・国際私法研究所での調査研究が実施できなかったことから、当該金額が発生した。
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Research Products
(3 results)