2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03241
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
愛知 靖之 京都大学, 法学研究科, 教授 (40362553)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 特許権 / 審査経過禁反言 / クレームの限定解釈 / 権利行使制限の抗弁 / 消尽 / 差止請求権の制限 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず、知財高判平成28年3月25日判時2306号87頁[マキサカルシトール知財高裁大合議判決]を契機として、出願時同効材(出願時における当業者を基準に置換可能性・容易想到性を充足する部材等)がクレームに記載されなかったという一事をもって、直ちに第5要件不充足として均等論適用を否定することができるかという問題について再検討を行った。その結果、大合議判決の理論的根拠の脆弱性、及び、大合議判決が例外的に第5要件充足を否定する事情について、それが法的安定性の見地から大きな問題を残すことを明らかにした。なお、同事件については最高裁判決(最判平成29年3月24日平成28年(受)第1242号)が下されており、知財高裁大合議判決との差異を中心に検討を行う予定である。 さらに、クレームの「限定解釈」あるいは審査経過禁反言に関連して、最判平成27年6月5日民集69巻4号700頁・同904頁[プラバスタチンナトリウム事件最高裁判決]を契機に大きな注目が集まったプロダクト・バイ・プロセス・クレームについて、最高裁判決後の平成28年中に下されたいくつかの知財高裁判決も参照しつつ、検討を行った。その結果、物の発明であっても、特定の製法で製造される物に限定する趣旨が、明細書や審査経過を参酌しつつ、当業者の通常の理解を基にクレームから明確に読み取れる場合には、不可能・非実際的事情の存否を問わず、明確性要件を充足すると考えるべきであるが、権利範囲は製法限定された範囲にとどまる(侵害訴訟において物同一の範囲にまでクレームを広げることは審査経過禁反言等により許されない)との立場を明らかにした。 以上の研究の成果を論文等で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度に引き続き、特許権行使制限法理の理論的根拠の解明と判断枠組みの定立をさらに進め、その成果を公表するという当初の目的をおおよそ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究期間最終年度として、これまで行ってきた特許権行使制限法理の個別的検討を基礎に、制限法理相互の関係を体系的に整理する研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた出張のうち、調整が付かず断念したものがあった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に引き続き、本研究課題に関連する文献・資料の購入を進める。また、学会・研究会等に参加し、研究成果の報告や意見交換を通して本研究課題に関する議論を深める。そのための旅費を支出する。
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