2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Comparative Study of the Obstetric Compensation System for Cerebral Palsy and Medical Malpractice Litigation
Project/Area Number |
15K03245
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
我妻 学 首都大学東京, 法学政治学研究科, 教授 (30211668)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 産科医療補償制度 / 医療事故調査制度 / 医療事故の原因分析 / 無過失補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2009年に施行され、2019年に10 年目を迎えた産科医療補償制度の現状分析および類似の補償制度の比較法的考察からなる。 産科医療補償制度の審査件数は、2018 年12月末現在、総計3,459件であり、補償対象となったのは、2,592件である。訴訟で賠償交渉が行われた事案(57件)および訴訟外で行われた事案(51件)、総計107件に過ぎず、大部分の事案は、産科補償制度による救済を求めていると推察できる。原因分析報告書が2018年12月末現在、公表されているのは、2,204件である。原因分析報告書の作成・公表が、以前より迅速化されていることがわかる。分娩に関連する事由によるという産科医療補償制度の本来の趣旨とは異なる場合も相当数あるとされており、今後は、遺伝子検査と脳性麻痺の関連性など原因究明を図ってゆくかも検討する必要があろう。 イギリスにおいても無過失補償制度の導入が検討されていたが、予算の手当が困難であるとして、いったん導入に関し、断念されている。しかし、2016年末に分娩の医療体制を向上させるとともに、原因究明と早期の救済制度を再び検討するとされており、今後も比較法研究を継続したい。 研究対象を産科医療補償制度だけではなく、2016年から医療事故原因の報告・調査制度にも拡げて行っている。医療事故調査制度が2015年から開始され、予期せぬ死亡事例に関し、院内事故調査が行われており、事故原因の報告・調査・再発防止は、医療安全を向上するための両輪であり、産科医療補償制度における原因分析と共通するからである。 イギリスにおいても医療事故調査制度が設立され、医療従事者に対する聞取調査と訴訟などの証拠資料との関係に関しても議論がなされていることも注目される。2019年に法曹倫理国際シンポジウムで、「英米の秘匿特権と通信秘密保護の制度」に関し報告している。
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