2018 Fiscal Year Research-status Report
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15K03247
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 著作物 / 類似性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、著作権の侵害成立要件である著作物の類似性の判断のあり方について、国内外の議論を参照しつつ、総合的に検討することを目的としている。 本年度も、昨年度に引き続き、我が国の裁判例の調査、検討を行った。我が国の裁判例は、江差追分事件最高裁判決に基づき、「表現上の本質的な特徴を直接感得できるかどうか」により著作物の類否判断を行っているが、近時の裁判例は、直接感得性の有無について、原告・被告作品の共通点・相違点の全体比較を通して、両作品の印象・効果が類似しているか否かにより判断する傾向があることが明らかとなった。 また、本年度は、比較法研究として、ドイツ法の検討とともに、アメリカ法の検討を行った。アメリカの裁判例でも、我が国の江差追分事件判決と同様に、原告・被告作品の共通部分がアイデアや創作性のない表現等の保護されない要素であるか否かを検討し、ついで、通常の観察者を基準に、作品全体が類似しているものと受け止められるか否かを検討するという手法が見られた。著作物の類否判断に際して通常の観察者を基準とする根拠としては、著作権者に著作物のための排他的な市場を保証するという考え方が指摘されているが、これは、著作物の存在意義を受け手にとっての鑑賞価値にあるものと位置付け、後発作品が一般需要者にとって先行作品と類似の鑑賞価値を奏する場合に先行作品の著作権の保護を及ぼすべきであるとする「直接感得性説」の発想に親和的なものということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内外の裁判例、文献の調査は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究成果(内外の裁判例及び文献の調査、他の知的財産法における客体の同一・類似の判断との比較)を踏まえて、総括的な検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題と関連する意匠の類否判断の研究を次年度行うため、本研究の研究期間の延長を申請した。次年度未使用額は、上記研究において使用する予定である。
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Research Products
(5 results)