2017 Fiscal Year Research-status Report
拡大・新生児スクリーニングをめぐる法と倫理ー対象疾患拡大に伴う課題と解決策の探求
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15K03248
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岩田 太 上智大学, 法学部, 教授 (60327864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医事法 / 新生児スクリーニング / 公衆衛生 / プライバシー / 研究倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象は,先天性稀少疾患の早期発見・早期治療を目指す公衆衛生分野のプログラムである新生児スクリーニング(以下「NBS」と記す)である.新たな検査技術導入により近年日本でもその対象疾患が急増したが,本研究では従来十分検証されてこなかった拡大「NBS」をめぐる法的・倫理的課題を探る. 拡大「NBS」の問題群の分析は,医療の発展のための遺伝学的情報の利活用とプライバシーの尊重との相克,真の患者の視点とは何か,などという医療と法のあり方そのものにかかわる,広がりのあるテーマである.本研究では,単なる海外の制度や実態の紹介を超え,近年日本でも拡大された「NBS」という現実の政策における課題の掘り起こしを含め政策提言を行うことを目指すと同時に,それらの分析を通じ医療と法(医事法)の在り方を再検討することによって,公衆衛生の視点を重視し,人々の健康や医療に関わる問題の総合的な分析(統合的なヘルス・ロー(健康をめぐる法学))の視覚をも検討対象する点に,本計画の特色がある. 具体的な分析対象は,(1)拡大「NBS」の効果と問題点,(2)「NBS」残余血液サンプルの目的外利用の是非,(3)「NBS」の対象拡大をめぐる政策決定プロセスと患者支援の在り方,の3つである.文献調査と国内外の専門家へのインタビューなどを織り交ぜて検討を行い,日本での政策変更に伴い近い将来直面しうる課題と弊害を洗い出し,解決策の提言をも目指す研究である.第2年度は,初年度に引き続き文献研究を中心として,上記3点の最新の議論状況の確認を行ってきた.特に合衆国における制度挿入の歴史などについても検討し論文を執筆を行った.引き続き文献研究の結果生じた疑問などを解消のために海外の専門家などから情報を収集するために実地調査を行うと同時に,分析してきた文献研究についてさらに公表作業に取り組んでいきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第3年度は,1-2年度に引き続き,文献研究を中心として,日米などを中心に新生児スクリーニングおよび稀少疾患患者をめぐる支援のあり方についての議論状況の確認を行ってきた.これまでは,(1)「NBS」をめぐる法的・倫理的課題の検討,(2)残余血液サンプル・情報の研究利用とプライバシー,(3) 稀少疾患支援のあり方と課題,政策決定プロセスにおける法的課題の洗い出し,などの3点についての集中的な資料収集とそれらの分析を行ってきた.収集した文献は膨大となっているが,先行研究の網羅的な吸収を図ってきた.特に合衆国における制度導入の歴史などについても検討し論文を執筆を行った.さらに,2017年秋には日本における新生児スクリーニングをめぐるインフォームド・コンセントの状況についての電話および郵送調査を行い,2017年12月には台湾の学会で口頭報告を行い,おおむね順調に進んでいるといえよう.また2018年2月から3月にかけて海外での補足的調査および海外の研究者からフィードバックを得た. 今後は,文献研究の結果生じた疑問などを解消のために海外の専門家などから情報を収集するために実地調査を行うと同時に,分析してきた文献研究および日本における新生児スクリーニングの実施対応などについて,さらに公表作業を加速させたい.テーマ自体が医療と法との学際的なテーマであり,かつ,その医療の中でも,遺伝性疾患に対する発症前診断という,単に専門的であるだけではなく,最新のテクノロジー発展や最先端の医学・遺伝学的な知識がかかわる分野で,正確な理解も困難な場面も多々あるが,協力者などからのサポートを受けることによって,研究計画は順調に進めていくことができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
第4(平成30)年度は,研究の最終段階として,研究成果の公表作業が中心となる.合わせて成果について専門家からのフィードバックを受け,さらなる研究の洗練を目指す. 具体的には,第1-3年度に行った包括的な文献調査を継続しさらに進化させるとともに,そこから生じた疑問点や実態などの把握のために調査を継続をする予定である.専門家などへのインタビューを通じ,合衆国などの海外の最新動向を含め問題状況についてのより正確な把握を目指す.特に前述の「NBS」の効果の検証のために設けられた事前・事後の検証システムの運用実態やそこでの法の役割について継続的に最新の状況を把握することを目指す.同時に,アメリカの関連学会のネットワークなどを活用し,「NBS」の法的・倫理的課題の現況について最大限吸収する.また第3年度以降開始した日本の状況の検討を含め,日米比較から,近い将来日本でも問題となりうる法的・倫理的課題の分析を行う.日本においても専門家からの協力を得て,日本の制度と実態な正確な理解に努め分析したい.それらの検討を経て,さらに所属研究会・学会などにおいて,引き続き口頭発表および論文執筆を行い,海外を含め発表の機会をさらに探りたいと考えている.
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Causes of Carryover |
当初研究計画の最終年度の平成30年度に実施予定であった海外の学会での成果発表や成果に関する海外の専門家との意見交換を平成29年度中に実施することできた.研究成果の更なる洗練のために,平成30年度にはそれら前年度の海外での学会発表などの機会に得られた専門家からのフィードバッ クを吸収しつつ,引き続き公表作業を行う.追加的に学会・研究会などで報告する場合も,旅費などは所属機関の研究費なども活用しつつ,平成30年度が最終年度になるため,同年度中にはさらなる論文の公表をする予定であり,当初の研究目的の達成を目指したい.
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Research Products
(3 results)