2017 Fiscal Year Research-status Report
変貌するリーガル・マーケットとドイツ弁護士職業法-我が国弁護士職業法の未来図-
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15K03251
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
森 勇 中央大学, 法務研究科, 教授 (30166350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 弁護士の基本的義務 / 弁護士職業像のコアバリュー / 弁護士の利益相反禁止 / 弁護士の独立性 / 弁護士の守秘義務 / 勤務弁護士 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度にあっては、年度初頭の4月に、中央大学後楽園校舎において、従前準備を進めてきた日独弁護士職業法シンポジウムを開催した。テーマは、弁護士の基本的義務・その職業のコアバリューである「独立性」と「利益相反の禁止」である。従前より支援をえていたケルン大学弁護士法研究所のプリュッティング教授とヘンスラー教授、および、元ドイツ弁護士協会会長であり、現在はドイツ自由職業協会会長であるエヴァー弁護士(博士・キール大学名誉教授)そしてドイツ連邦弁護士会副会長でありハレ弁護士会会長のヴェッセルズ弁護士(博士)を招聘し、日本サイドの報告者を加えて、日独双方から、テーマに関わる現況と問題点の報告がなされた。これを受けて、参加者からの質問と問題提起を活発な議論となった。なお、シンポジウムの参加者は、テーマが弁護士の職業実践に大きく関わることから、100名を越えた。その成果は29年度末である平成30年3月に刊行された「弁護士の基本的義務――弁護士職業像のコアバリュー」(中央大学出版部刊)に結実している。 平成29年7月には、上記シンポジウムの成果とりまとめのため、ケルン大学弁護士法研究所を訪問し、先にあげた両教授、そして来日はできなかったが上記シンポジウムに紙上参加したケルン大学のキリアン教授と打ち合わせを行うとともに、資料収集に当たった。さらにこの機会にドイツ連邦弁護士会およびドイツ弁護士協会を訪れ、両会の国際協力担当者と面談し、上記刊行物に収録するドイツ文献の翻訳権をえるとともに、今後の研究展開への協力を要請し一般的ではあるが、快諾をえた。 平成30年2月には再度ケルン大学弁護士法研究所を訪れ、次のステップへと研究を進めるための必要な協力体制を確認するとともに、研究テーマの具体化とそのありようについて助言を受け、今後につき協議するとともに、資料収集にあたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初平成28年度末までに、少しく大規模な研究集会を予定していたが、先に述べたとおり平成29年度初頭(4月8日)にずれ込み、進捗に若干の遅れが生じ、少し積み残しが生じてはいるが、ほぼ順調といえる程度の遅れである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長にかかる平成30年度においては、従前取り組んできた3つの弁護士の基本的義務についての研究を進化させるべく、守秘義務について、ドイツにおける秘密漏示罪と昨年度における改正をドイツ弁護士法ないしは弁護士職業規則の観点から考察する予定である。 これに加え、次の研究への橋渡しとなる、ドイツ連邦弁護士において、弁護士の基本的義務の一つとしてあげられている「事に即した(Sachlich)」振る舞いとはなにか、その内容の探求の端緒をつかみたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年度において行った国際シンポジウムは、ドイツより学者3名および実務家2名を招聘して開催予定であったが、実務家2名の招請費用については、渡航費用等を派遣団体が負担してくれた。また、学者3名については、1名が諸般の事情で紙上参加にとどまり、またもう1名については他機関の招請の機会に来日したことから、ほとんど出費を要さなかった。また、所属機関である日本比較法研究所事務スタッフの尽力により、会場費が不要となつたほか、様々な面で経費を節約することができたため、予想を大幅に上回る差違が生じたところである。 平成30年度に関しては、主として、まずは本年度の研究計画にある事項の研究を深めるための渡独費用にあてる。また、また、可能であれば、ドイツ弁護士法担当最上級裁判官を招聘たく、その研究集会開催の費用にあてたいと考えている。
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