2016 Fiscal Year Research-status Report
性的マイノリティの人権に関する総合的研究―国内法政策を促進するために
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15K03255
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Research Institution | Takaoka University of Law |
Principal Investigator |
谷口 洋幸 高岡法科大学, 法学部, 准教授(移行) (90468843)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | LGBT / SOGI / 同性婚 / 国際人権 / 性的指向 / 性自認 / 文化多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)同性婚・パートナーシップ制度をめぐる国内の動きと国際比較、(2)性的指向・性自認に関する国際人権法の適用の2点について研究を実施し、両者に関連して、論文・学会報告等をもちいて研究成果の刊行も実施した。 (1)これまでの研究で得られた同性婚・パートナーシップ制度について、日本国内における導入の議論を整理した。これまでの市民運動や当事者運動を対象として分析を行い、諸外国における議論の展開との相違点を明らかにした。結果、戸籍を中心とする家族制度の呪縛や人権・権利意識および市民運動に関する特徴的な意識がある種の阻害要因となっていることがわかった。さらに、日本での同性婚・パートナーシップ制度の実現に向けた法的な阻害要因の一旦も明らかにすることができた。 (2)として、昨年2月の女性差別撤廃委員会における対日審査の過程および議論を詳細に分析した。いわゆる「LBT女性の人権」に関する議論において、一般的な差別禁止の文脈だけでなく、健康や労働、家族関係に関する個別の人権規定についても十分に検討が必要なことが明らかとなった。またその過程において、国際人権法の適用に関連する議論のひとつである文化多様性の確保との関係において、性的指向・性自認の人権保障をめぐる議論が極めて重要な意味をもっていることも明らかとなった。伝統的価値や文化・歴史的経緯を理由とする反対論に関連して、現在、日本国内の議論と国際社会での議論に矛盾が生じており、国内法政策の実現にむけて解決すべき問題の一つを特定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の実質的な内容について、おおむね順調に進んでいる。むしろ内容については、計画にはなかった文化多様性をめぐる議論との関係や市民運動論との関係についても研究を進めることができ、当初の予定よりも幅広い内容が検討できている。 ただし、形式的な面において、情報公開のためのアーカイブ構築や国際会議での報告等が十分に行えていない部分がある。国内での論文等による刊行および研究発表・招聘講演などは順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画にしたがい、研究成果の刊行を進めていく。とくに最終年度に刊行を予定している『性的マイノリティと人権』の単著本の執筆をできるだけ早めに準備をすすめていく。また国際シンポジウムの実施に向けての調整も同時に開始する。 研究計画の大幅な変更はなく、次年度および最終年度に向けて、これまでと同様に着実に研究成果を挙げていく。
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Causes of Carryover |
年度内使用を心がけたものの、端数としての残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している旅費に充当し、残金については最終年度の国際シンポジウムの費用として使用する。
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Research Products
(14 results)