2015 Fiscal Year Research-status Report
医療訴訟における専門的知見活用策の比較法的研究―書面鑑定と交互尋問を超えて
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15K03256
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平野 哲郎 立命館大学, 法学部, 教授 (00351338)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 専門訴訟 / 専門的知見の活用 / 鑑定 / コンカレント・エヴィデンス / カンファレンス鑑定 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーストラリアの研究者,弁護士,裁判官と頻繁に連絡を取りつつ,オーストラリアにおける専門家証人の同時尋問の方法であるConcurrent Evidenceについて文献,判例,法令の収集を行った。韓国についても研究者,弁護士,裁判官から医療紛争仲裁調停院における鑑定制度の実情などを調査した。フランスにおける鑑定制度の現状については実地調査を行った。 日本については,東京地裁と大阪地裁の医療集中部や医療事件を多く担当する弁護士からのインタビューを行った。 これらの調査の結果,日本で従来行われてきた単独書面鑑定は結果の偏りや引き受け手の不足などの問題が多く,これを解消するためになされた2004年の民事訴訟法改正や新しい専門委員制度も十分には機能していないこと,逆に複数の専門家が法廷で議論をすることによって客観性の高い専門的知見を得られることが判明した。すなわち,専門家同士が口頭で議論することによってピア・レビュー効果が働き,不正確・不誠実な意見が排除され,ジャンク・サイエンスを法廷から駆逐することができるという成果が現れている。もっともオーストラリア等の制度をそのまま制度的背景の異なる日本に持ち込むことはできないため,工夫が必要となる。 そこで,これらの調査結果をもとに,オーストラリアのConcurrent Evidenceと東京地裁のカンファレンス鑑定を融合した新たな実務上の工夫を提言する日本語及び英語論文の執筆に着手し,28年度には,国内外の研究会でも報告する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者は本研究の基礎となる研究の実績があり,研究者以外にも実務界や海外にも協力者がいるため十分な成果が現れている。現在までに民事訴訟において専門的知見を活用する方法についてオーストラリアの実務と東京地裁の実務を比較する報告を国内で3回,フランスで1回行っている。 また,これらの比較や研究会での議論を踏まえて新たな提言をする英語論文を執筆し,Ritsumeikan Law Reviewに掲載が予定されている。
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Strategy for Future Research Activity |
コンカレント・エヴィデンスについてはシンガポールでも採用されているとのことであるので,シンガポール調査を行うとともに,シンガポールで開催される東アジア法社会学会で本テーマに関する報告を行うことを応募している。 ほかにも日本医事法学会等での報告や論文執筆を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度実施した海外調査について研究分担者として参加している他の科研費からの支出でまかなえたために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,海外での調査および学会参加を複数予定しているため,それに当てる。 また,論文の翻訳料の支出も予定している。
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Research Products
(5 results)