2017 Fiscal Year Annual Research Report
Asianism and Taisho Democracy
Project/Area Number |
15K03259
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 岳志 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40447040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超国家主義 / 革新 / 大正デモクラシー / 無産政党 / アジア主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1930年代における無産政党関係者の思想展開について研究を進めた。特に新人会出身の活動家の思想と行動を追及し、彼らの革新イデオロギーが、いかにして超国家主義へと接続するのかを考察した。 成果の一部として『超国家主義-煩悶する青年とナショナリズム』(筑摩書房、2018年)を出版した。ここでは、日露戦争前後に拡大した青年の「煩悶」に注目し、その実存的探究が世界全体との合一を希求し、超国家主義という政治運動に回収されていったプロセスを論じた。その過程で重要な意味を持ったのが「革新」という観念であり、彼らは現状のラディカルな「革新」こそが、「万邦無比の国体」への随順によって成し遂げられると考えた。 本研究において明らかにしたことは、大正デモクラシーの中に含まれる全体主義的要素についてである。大正デモクラシーにおける「革新」思想と「煩悶」という実存問題が融合することで、超国家主義という「復古的革新」が大きな勢力となり、無産政党関係者もその担い手となっていった。つまり、1920年代から30年代のプロセスは、大正デモクラシーが崩壊したことで超国家主義が拡大したのではなく、大正デモクラシーの延長上に超国家主義が展開したと理解すべきであると考える。 他にも成果の一部として、『親鸞と日本主義』(新潮選書、2017年)を刊行した。ここでは革新的な日本主義と浄土真宗の宗教思想が以下に結びついていったのかを論じた。また今後、成果の一部として『保守と大東亜戦争』(集英社新書)が2018年7月に刊行される予定である。宮崎龍介に代表される無産政党メンバーと超国家主義の関係についても、書籍を刊行する予定である。
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