2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03260
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
飯山 雅史 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80732023)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ政治 / 宗教と政治 / 大統領選挙 / 投票行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代アメリカ政治では、保守とリベラルのイデオロギー的分極化が進み政党対立が過激化した結果、政府が機能停止に追い込まれるほどの政治停滞に陥るなどの現象が起きている。対立は主に、経済・財政政策、外交政策、宗教・文化的政策の三つの争点から生まれているが、本研究は、このうち宗教・文化的争点に関して量的、質的に分析し、今後のイデオロギー対立の様相、ひいてはアメリカ政治の動向分析を行うための知見を得るものである。 2015年度は、研究計画で示したように宗教的争点の対立構図変化に関して、近年発表されたAmerican National Election Studiesの新しい統合ファイルを利用して分析した。2010年以降の米選挙では茶会運動の活発化などを通して、共和党保守派の関心事項が宗教的争点から、財政的争点(小さな政府志向)に移行しており、2012年選挙では宗教的争点はあまり前面に現れてこなかった。同統合ファイルには2012年大統領選挙の調査データが含まれるため、分析は、この選挙においても宗教的争点が投票行動や政党支持傾向に影響を与えているかどうか、および宗教的保守派のキリスト教福音派は、宗教的争点が顕在でなくても共和党支持に傾くかどうかを、多変量回帰分析の手法で計量的に分析した。 その結果、社会経済的属性を制御した上でも、宗教的要因は有権者の投票行動、政党支持に有意な影響を与え、かつ福音派は主流派と比較して、以前よりも一層共和党支持傾向を強めていたことがわかった。これによって、宗教的要因の与える影響力は衰退していないばかりか、福音派においてはさらに強固となってきたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度には、福音派若年層の政党支持傾向分析を行い、同性愛問題をめぐる世論動向の分析に踏み込む予定だったが、予想外に大学での教育関連業務に時間を取られたため、前者は一部の研究を開始しただけで、後者はまだスタートできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にあげたサブテーマで残るのは以下の3つである。1、福音派若年層の政党支持傾向、2,同性愛をめぐる世論の急激な変化、3,急増するヒスパニック移民の政治意識(宗教と政治の側面から)--。今年度は1,を完成させて2に踏み込むと同時に、3の準備を開始していきたい。 一方、2016年大統領選挙は、デマゴーグ的なトランプ氏が共和党予備選のトップを走るなど異様な様相を呈している。7月に行われる党大会が焦点となり、本研究の主題である宗教と政治問題に関しても論戦が予想されるので、現地調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた米国出張が実行できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年7月に民主党、共和党両党大会調査のため、長期米国出張を行う。同年度は50万円の配分に減額しているが、昨年からの次年度使用額と併せて旅費使用を予定している。
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