2016 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域における「生活」をめぐるガバナンス-日独地域比較研究
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15K03261
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
大黒 太郎 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20332546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魚住 弘久 熊本大学, 大学院社会文化科学研究科, 教授 (60305894)
東原 正明 福岡大学, 法学部, 准教授 (00433417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農山村地域 / 持続可能性 / グロースバールドルフ / 再生可能エネルギー / フェライン / 雇用の創出 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究は、ドイツ担当の研究代表者である大黒太郎が主として企画者となってドイツでのフィールドワークを実施したことが活動の柱である。またフィールドワークの準備、さらには実施後の総括のために共同の研究会を開催した。
1.ドイツ、バイエルン州グロースバールドルフでのフィールドワークの実施:調査対象として、再生可能エネルギー生産を基盤に農村地域の持続可能な発展で成果をあげたとしてバイエルン州から特別賞を受けた村、グロースバールドルフを選んだ。この村の成果を生み出した最も重要な仕組みは、すべてのプロジェクトが協同組合方式で運営され、プロジェクトの企画から、住民の合意の取り付け、資金調達、組織の立ち上げ・運営まで、すべてが村民だけで行われていることであった。この村が、バイエルン州で最も小さな村(住民約850名)だということを考えれば、村の潜在力とそれをプロジェクトへと編み上げる組織化の力には驚くべきものであろう。農山村地域の小さな自治体がもつ潜在力とその組織化の成果―この仕組みを調査できたことが大きな成果である。 2.研究会活動:共同の研究会は3回開催し、特に年度末には、フィールドワークの成果を総括するとともに、日本やオーストリアにおける「過疎」と「地域開発」の同行に関する比較研究への展開の方法について、議論を深めた。同じく農山村地域の持続可能性を課題としながら、行政主導で「観光」や「農の6次化」を有効な政策として推進し、また効率化の名のもと自治体の大規模化(合併推進)を進める日本との比較研究が有効であることが明らかとなった。 3.成果:共同研究者が熊本大学在籍中に熊本地震で被災したことから、これまでの研究の成果と、被災者としての切実な問題意識で執筆した「熊本地震と南阿蘇鉄道(『熊本法学』第138号)が大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究第1年目に予定していたドイツでのフィールドワークを実施したことで、研究は大きく進んだ。また、今年度最終の共同研究で、ドイツ・グロースバールドルフでのフィールドワークの成果を総括する中で、ドイツの事例を軸に、日本(九州・北海道、福島)やオーストリアといった本研究の対象地域との比較を行うことが有効だと確認されたことは、最終年度の研究総まとめへの見通しついた。昨年度の成果を論文として公表し、それをもとに、比較研究へと発展させることが、次の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
それぞれの研究分担者が企画者となる形で、ドイツ(平成28年度)、日本(平成27年度・28年度)でのフィールドワークを実施し、文献踏査と合わせて地域研究を進めてきた。平成29年度は、オーストリアでのフィールドワークをこれに加えて、各国の比較研究へと本研究をさらに深めたい。 各地でのフィールドワークの成果は、企画者である研究分担者を中心に論文をまとめ、共同研究会の場で議論を深め、それぞれの論文としてまとめるとともに、3地域の比較を主とした研究へと進める。
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Causes of Carryover |
当初2017年度に2名で行われる計画であったオーストリアでのフィールドワークを3名全員参加にすることに計画変更したことに伴い、2016年度の研究代表者のドイツへのフィールドワーク関連予算を別予算から措置することとしたため、次年度使用額が残ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
オーストリアでのフィールドワークを共同研究者3名で実施することにし、当初予定にない1名分の旅費に充てる。
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