2016 Fiscal Year Research-status Report
議院内閣制のバリエーションと制度変化の比較政治学的研究
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15K03264
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川人 貞史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10133688)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 議院内閣制 / 比較政治 / 総選挙と解散権 / 首相の在任期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,各国との比較を通じて日本の議院内閣制を,(1)各国における議院内閣制の根幹制度のバリエーション,(2)日本および各国の近年の制度改革,(3)日本における近年の政治過程におけるアクターの行動変化に注目しながら,理論的・実証的に研究することを試みる.本年度における研究実績は,以下のとおりである. (1)昨年度に収集したヨーロッパ諸国の戦後全期間の内閣レベル・データに,オーストラリア,カナダ,ニュージーランド,日本の内閣レベル・データを収集・追加作成して,分析用のデータセットを完成させた.上記データセットを用いて,各国の総選挙の間隔,すなわち,次の総選挙までの期間のバラツキおよび,首相がどのように総選挙を乗り切り,どのような場合に退陣するかを分析した. (2)その結果,首相・内閣による早期の解散権の行使,あるいは,議会の信任を失って総辞職した内閣の後継首相が決まらない政治的行き詰まりを打開するための解散が議院内閣制諸国における解散の実態であり,日本におけるほとんど無制約で自由な首相の解散権および不信任決議に対抗する解散権は,制度および実態としてきわめて例外的でかつまれであることが明らかとなった.また,民主政治が不安定な議院内閣制諸国では総選挙での内閣の敗北および選挙時以外の内閣の退陣が頻繁であるのに対して,民主政治が安定した諸国では総選挙での内閣の交代が多いことが明らかとなった.他方で,日本は,総選挙での内閣の敗北がきわめて少なく,選挙時以外における内閣の退陣が頻繁であり,かなり例外的なパターンであることをデータ分析で明らかにできた. (3)チェコおよびハンガリーの議会調査を実施し,それぞれの立法過程および議院内閣制の作動について聞き取り調査と情報収集を行った. (4)参議院議院運営委員会における採決が多数決によるか,全会一致によるかを調べたデータの整理をさらに進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,ヨーロッパ諸国,オーストラリア,カナダ,ニュージーランド,日本の内閣レベルデータを活用した分析を行うことができた. また,チェコとハンガリーの議会調査を行い,議院内閣制の作動について聞き取り調査を行うことができ,より広範な議院内閣制諸国の比較政治研究の素材を得ることができた. 参議院議院運営委員会における採決が多数決によるか,全会一致によるかを調べたデータについて,1970年代以降に政府提案の任命人事の同意案件が多数決決定されるように変化したが,その原因(党派別賛否)についての情報を得ることができ,分析を進めることができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,最終年度として,議院内閣制のバリエーションと制度変化の比較政治学的研究のまとめ作業を進める. 具体的には,(1)ヨーロッパ諸国と日本の解散および内閣の存続についての研究をまとめる.(2)参議院議院運営委員会における多数決決定のあり方をデータにもとづいて分析し,長期的変化とその原因について探求する.(3)議院内閣制諸国の政権と立法に関する比較分析を進める.
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Causes of Carryover |
物品購入で若干購入を控えたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍の購入に充当する.
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Research Products
(2 results)