2017 Fiscal Year Annual Research Report
Political disengagement and the structural change in British politics: an examination of party support at local level
Project/Area Number |
15K03269
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政治学 / 政治史 / イギリス政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、現行のイギリス政治における政治的「疎外」の構造を明らかにすべく、2000年代以降に地方選で一定の支持を得た小政党を軸に、政党システムならびに有権者との関係の変容を検討することで、ローカルレベルでの政党支持の変容を特徴づけるものである。 過年度の分析から、2016年以前の状況として、イングランドではUKIPへの投票が保守党支持層のみならず、とくに中部以北で労働党支持層からも生じていることを確認できた。これは主要な国政野党が有権者の受け皿となっていない点で、政治的「疎外」が単なる政権批判との性格にとどまらないことを示すもので、実際に同年6月の国民投票は労働党支持から離れた票が大量に存在することを確認する結果となった。他方で、この国民投票が政党間競争にもたらした変化は甚大であり、ゆえに、以降の政治的「疎外」をめぐる状況も一変している。 最終年度はこれらの認識をもとに、当初の計画通り、2017年5月の地方議会選挙を中心に分析を進めた。6月に急遽実施された総選挙からも有益なデータを収集できた。また分析ではスコットランドの状況にも注目したが、これは、2015年(総選挙)、2016年(地域議会選挙)に政治的「疎外」の点で興味深い状況が観察されたためである。以上の作業過程で、スコットランド北部とイングランド北東部の自治体の資料を現地にて収集した(7月、1月、3月)。 国民投票後に実施されたこれらの選挙では政党支持が短期間に変化したことを確認できる。小政党支持に回っていた票が全国的な主要政党に再吸収されるという傾向である。スコットランドでは2016年前半には生じており、またイングランド・ウェールズでは、2017年に入り、大都市で労働党、地方都市や農村部で保守党へと分岐しつつ生じている。いずれも急進的な争点変化が住民(国民)投票の実施でもたらされたためと推察される。
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