2015 Fiscal Year Research-status Report
「たちの悪い問題」への適用可能性の検討を通じた「ガバナンス形成」理論の研究
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15K03272
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野 耕二 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 名誉教授 (70126845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ガバナンス / 紛争処理 / 政治的能動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は本研究の初年時に当たるため、研究計画の作成と本格的な研究体制の確立とをめざした。そのために、本年度には2回の海外出張を実施し、人的ネットワークの構築に努めた。9月のイギリス出張では、ガバナンス研究を行っている研究者との討論を行い、今後の研究課題の特定化を図った。また1月のドイツ出張では、紛争処理の研究者であるバウマン博士とコンタクトし、若干の議論を行うと共に今後の継続的な研究協力の基盤を形成した。日程等の都合により、残念ながら企画していたアメリカ出張は実現できなかった。 本年度の研究成果としては、我が国における「18歳投票制の実現」に関連して2本の依頼原稿を執筆した。本研究代表者も、日本学術会議などでの活動を通じて「18歳投票制」の実現をめざしていたところであり、これを機に「自ら主体的に紛争処理を行うことを可能とする政治的能動性」の概念の明確化を図っているところである。この作業は、本研究の課題である「たちの悪い問題」の処理パターンの解明のための準備作業として位置づけることができる。社会において既存の紛争処理メカニズムとしての政治制度を主体的に活用する「政治的能動性」は、個人の紛争処理能力の向上のための出発点と言える。そこからさらに、既存の紛争処理メカニズムでは処理が困難な「たちの悪い問題」をも処理するための新たな紛争処理メカニズムを構想しそれを実現するための方策を探るために、さらに研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り2回の外国出張を実施し人的ネットワークの構築作業は進んでいる。研究実績に関しても、これまで進めてきた研究との関連で一定の成果を上げてきている。ただし、平成27年度には本研究代表者が所属大学での定年を迎え、年度末にさまざまな行事がもたれると共に、研究室の明け渡しといった「研究以外の作業」に予想外の時間を割くことになってしまった。そのため、今回構築した人的ネットワークを活用して更なる研究を進めていくための時間を十分に確保することができなかったことは、当初十分に予期していなかった点である。幸いにも、本研究代表者はこれまで所属していた大学の高等研究院に、定年後も研究室を確保することができたので、平成28年度以降はそこを拠点にしてさらに研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関における職名は「教授」から「名誉教授」に変更されたものの、今後の研究の進め方については、申請時から変更する必要はないと考えている。新たな状況としては、平成28年度より本研究代表者が「調停委員」に採用されたことを挙げることができる。これは最高裁判所によって辞令が交付される臨時職の国家公務員であり、今後は本研究の課題でもある「紛争処理」の専門家として、実際に生起している社会紛争の処理に関与することが可能となった。この立場からの活動にも基づき、新たな「ガバナンス形成」の理論構築に取り組むこととしたい。
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