2017 Fiscal Year Annual Research Report
On the Theory of "Governance Formation" from the Viewpoint of " Wicked Problems"
Project/Area Number |
15K03272
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野 耕二 名古屋大学, 法学研究科, 名誉教授 (70126845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政治 / ガバナンス / たちの悪い問題 / 紛争処理 / 解釈学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来型の政治学では紛争処理過程の解明が困難とされている「たちの悪い問題」を手掛かりとし、政治の領域における「ガバナンスの形成過程」を分析するための理論枠組みの構築を目指したものである。研究の最終年度である平成29年度には、「難民問題」に関する資料収集のためにドイツ連邦議会選挙の現地調査を実施するとともに、紛争処理過程の動態的把握のため新たに構築されつつある「新しい社会科学」と「解釈学的政治学」の諸理論を検討した。その成果の一端は、論文「解釈学的政治学の意義」として平成30年3月に刊行された。そこでは、アパルトヘイト政策をめぐる「南アフリカの民主化過程」を分析した業績を紹介しつつ、従来型政治学では軽視されてきた「解釈学」的視点の導入を主張している。この論文は、「ガバナンスの形成過程」の動態的把握のための基盤を明らかにしたといえよう。 3年間にわたる本研究を実施していく中で、「たちの悪い問題」という用語を手掛かりとして、先進諸国における選挙時の投票率低下や放射性廃棄物処理問題といった具体的課題の検討作業を開始した。その成果はすでに、個別課題の検討結果を紹介する小論に加え、それを分析するための「政治学理論の全体構造」を俯瞰する論文「政治への新たな視座」として公刊されてきている。最終年度に公刊した論文「解釈学的政治学の意義」は、その研究の流れを引き継ぐものであるが、それで本研究が締めくくられたわけではない。本研究がその目的とした「未来志向型」で「主体形成型の政治学」を確立するためには、さらにもう1本から2本の論文を執筆することが不可欠であるが、時間的制約もあり3年間でそれを果たすことはできなかった。ただし、そのための資料収集やさまざまな参考文献の収集は、本研究経費を活用することによってすでに終了している。今後は、それらを活用した研究をさらに進めることとしたい。
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