2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03275
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 百合子 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (30432553)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民主主義 / ラテンアメリカ / 福祉国家 / 福祉再編 / 政治経済学 / 貧困 / 格差 / 社会的保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、民主化してから30年が経過したラテンアメリカにおいて、政治経済的条件の変化を考察しつつ、同地域で新興する福祉国家再編過程の規定要因を解明することである。平成28年度は、1.ブラジルの事例について調査・研究、および2.メキシコの事例についての調査・報告を行うために、ブラジルとメキシコでの現地調査を予定でいていた。しかし、1.ブラジルにおいては大統領の弾劾を含む政治的混乱の最中であり、政治的条件の変化を客観的に調査するためには時間の経過を舞ってからのほうが望ましいこと、また、2.前年度の行った調査の結果、域内各国に見られる、大洪水や地震などの大規模自然災害の被災者への施策を社会的保護と結びつける必要性を学び、この視点を当初の研究計画と矛盾しない形で研究課題に組み込むことを検討する必要が生じたこと、の2点において、研究計画を若干変更する必要があった。 このため、具体的に、1.昨年度の研究成果を、6月にスペインのサラマンカで行われた国際学会、および9月にアメリカで開催された、アメリカ政治学会研究大会で報告を行った。 2.メキシコの事例について、集中的に日本で予備調査を行った後に、次年度初め(平成29年度)4月第1週にメキシコで調査を行った。3.日本で自然災害と社会的保護について文献調査を行い、その結果、政治経済的条件に加えて、自然災害も福祉国家のあり方に影響を与えている、との仮説を導くに至った。さらに、ラテンアメリカにおいて福祉が高度に発達しているウルグアイから専門家を招いて知見を提供していただくことを通して、福祉が充実した同国においても、市場経済化の影響を受けて、貧困層を対象とした社会的保護政策の見直しが行われていることを学ぶことができた。 このように平成28年度は、中間成果報告、文献調査、専門家の招聘を通じて、福祉国家再編に見られる多様なパターンを認識するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、当初予定していたブラジルにおける現地調査を遂行することは見合わせたが、前年度の調査の結果、自然災害を社会的保護に組み込むという新たな視点を得ることができ、文献調査により具体的な分析方法も明確にすることができた。さらに、海外の学会における中間成果報告を行った際に有益なフィードバックを得ることができたこと、およびラテンアメリカから専門家を招聘することを通じてウルグアイの事例について見識を深めることができたことにより、研究をおおむね順調に進めることができた。 このように、研究を進めるにつれて、当初は予定していなかった新たな知見を得ることが可能となった。その結果、研究のスコープが広がり、研究課題に対する理解を深める結果になった点を強調したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、1.海外の学会でこれまでの進捗状況を報告して、同分野の専門家からフィードバックを得ること、2.自然災害が社会的保護のあり方、ひいては福祉再編へと及ぼす影響について、仮説を検証することと理論構築を試みること、および2.ブラジルの政治状況次第で、昨年度見合わせた現地調査を行うこと、を予定している。もし引き続き、ブラジルでの現地調査によって研究に必要な資料・データの入手が困難な状況が続く場合には、南米の隣国(ウルグアイ、アルゼンチン等)へと調査地を変更する予定も視野に入れている。平成29年度は、本研究の3年目であるため、最終成果物を意識しつつ、これまでの成果を統合する具体的な方法を考案することを予定している。
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Causes of Carryover |
当初、平成28年度内にメキシコの事例に関する国内予備調査と現地調査を行う予定であった。しかし、メキシコの調査出張を、平成29年度4月に行われるアメリカ中西部学会での報告のための出張と組み合わせる必要が生じたため、平成28年度に遂行予定のメキシコに関する調査の一部が次年度に繰り越されることとが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、平成29年度4月上旬に遂行するメキシコ現地調査出張にて使用する計画である。
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Research Products
(4 results)