2015 Fiscal Year Research-status Report
情報公開制度の政治学―アメリカ情報の自由法(FOIA)の制定・改正過程を中心に
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15K03285
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡山 裕 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (70272408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報公開 / 行政手続 / アメリカ / 権力分立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、情報公開制度をめぐる政治について、各国で情報公開制度の導入の成否が注目されてきたのに対して、制度が導入される場合に情報公開の範囲がどう決まるのかまでを意識し、アメリカの情報公開法(FOIA)の制定・改正過程を軸に検討している。とくに、政府内の諸機関や社会の諸主体の間での、情報公開の範囲に関する対立を踏まえて、二つの重要な立法の過程を焦点に、20世紀後半のアメリカの情報公開制度をめぐる政治を再構成しようとしている。 本研究課題の1年目にあたる本年度は、研究対象であるアメリカの情報公開法、とりわけ1966年の立法に向けた過程に関する基礎的な資料を収集し、その精査を通じて本格的な分析に向けた戦略を練ることに集中した。これは、この分野の通説を提供するような本格的な先行研究が存在しないためである。関連する二次文献を渉猟する以外に、二度の渡米で最も基本的な一次史料をあらかた収集できたのが、本年度の大きな収穫である。 具体的には、夏期に米国公文書館にて立法時の議会側の、春期にリンドン・ジョンソン大統領図書館にて政権側の史料を精査した。このうち政権側史料は残念ながら質量とも限定的であったのに対して、議会側史料については、従来カリフォルニア州公文書館に収められていた、情報公開立法の立役者のジョン・モス下院議員の大規模な文書が最近になって新しく統合されており、法案の起草および審議の過程をある程度詳細にたどれるようになった。また同文書には、当時情報公開法の制定に向けて尽力していたジャーナリストの団体の指導者の文書や、各種団体の刊行物も含まれており、予想以上に多くの有意義な情報を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、史料調査を行ったうえで可能であればその成果を活かしてワーキングペーパーの執筆を行いたいと考えていた。結果的にまとまったペーパーの執筆には到達できなかったものの、史料調査が予想以上に進んだために、上のような評価となった。研究の計画段階では、米国公文書館の議会側史料以外とは別個にカリフォルニア州公文書館のジョン・モス個人文書にあたる必要性があるとみられていたが、ごく最近になって両者が統合されて議会側史料に収められたため、調査が一気に前進したのである。このような事情もあって、統合された文書を活用した研究はまだほとんど公刊されておらず、本研究課題が独創的な成果を上げられる余地はかなり大きいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に収集した資料に、議会の公刊資料や新聞・雑誌といった公刊一次史料を組み合わせて分析を進め、なるべく早くワーキングペーパーとしてまとめたいと考えている。分析の方向性についての収穫として、本年度中にマイケル・シャドソンによるアメリカの「知る権利」に関する優れた通史が登場し、情報公開法について本研究課題と同じく政府機関同士の牽制手段としての位置づけを強調しているのが大きな刺激となった。もっとも、同書は立法過程を詳細に分析しているわけではなく、この点で独創性を出すことは十分可能と考えている。ある程度分析を進めた上で、情報公開立法に尽力したジャーナリスト達の史料をより本格的に収集する必要があるかどうかを見極めたい。
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Causes of Carryover |
本年度の史料調査において、史料を全てデジタルカメラで接写できたために、現地での史料コピー代として確保していた金額を次年度に使用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施を検討している、情報公開立法へのジャーナリストの関与に関する史料調査の際に、史料コピー代として有効に使用することを予定している。
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