2016 Fiscal Year Research-status Report
情報公開制度の政治学―アメリカ情報の自由法(FOIA)の制定・改正過程を中心に
Project/Area Number |
15K03285
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡山 裕 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70272408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報公開法 / アメリカ / 行政 / 政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、情報公開制度をめぐる政治について、各国での情報公開法制度導入の成否が注目されてきたのに対して、制度が導入される場合に情報公開の範囲がどう決まるのかまでを意識し、アメリカの情報公開法(FOIA)の制定・改正過程を軸に検討している。とくに、政府内の諸機関や社会の諸主体の間での、情報公開の範囲に関する対立を踏まえて、二つの重要な立法の過程を焦点に、20世紀後半のアメリカの情報公開制度をめぐる政治を再構成しようとしている。 本研究課題の2年目にあたる本年度は、前年度に収集した資料を精査・分析する以外に、アメリカの情報公開法でなぜ行政機関(のみ)が対象となったのかを、そもそも行政機関の位置付けに遡って検討を行った。それは、日本と異なりアメリカでは行政(機関)の存在が憲法上規定されていないばかりでなく、コモンローの伝統もあってむしろ行政国家を強化することが忌避されてきたためである。そのため本年度は、そうした制度的伝統にあって、極力行政機関への外部統制を強める形で行政国家が進んだことを明らかにしたペーパーを執筆し、世界政治学会(IPSA)年次大会で報告した。これには、世界的な行政学者であるガイ・ピータース教授を始め、有益なコメントを得られた。 また年度末には、アメリカにおける行政(機関)概念の構築を考えるうえで決定的に重要と考えられる、執行(executive)あるいは執行機関(executive department)との区別を明らかにするために、規制政策の導入に際して行政委員会と執行機関のいずれに任せるべきかが問題となった、無線規制をケースにして、ワシントンDCで資料調査を行った。今後、こうした基礎的な分析を踏まえて、情報公開法の制定過程を再構成する作業を進めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、情報公開法の制定過程そのものというよりも、行政国家の発展や、執行と行政の区別といった、かなり基礎的な論点に遡って検討を加えた。これは一見研究が難航しているように思われるかもしれないが、情報公開法の制定時にはどの機関の持つ情報を公開するかが主たる論点となり、その際なぜ行政機関に対象が限定されたのかが焦点となった。ところが、アメリカではそもそも行政機関の位置づけや範囲について必ずしも共通了解が得られていないという事情があり、その議論の系譜を押さえておくことは、一見迂遠ながら情報公開法の制定を理解する上で決定的な意義を持っている。本年度は、この点について明らかな収穫が得られ、次年度以降への地歩を固めることができたことから、順調に進展していると評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大きく二つの方向で分析を進めていきたいと考えている。第一に、本年度に進めた行政国家の発展と行政機関の位置付けに関する検討をさらに進め、情報公開法の制定時期にこれらがどのような状況にあったのか(どのように考えられていたのか)をはっきりさせることである。それを踏まえて第二に、情報公開法制定過程の説明と歴史叙述を行う作業に入りたい。とくうに、従来は政府活動の透明化を求める社会の側からの圧力が強調されてきたのに対して、本研究の特徴である、政府内の諸機関の相互牽制という契機を重視した形で分析枠組みを構築できればと考えている。
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Causes of Carryover |
物品購入と旅費の使用に際して端数が生じ、無理に残額を使用するよりも次年度の予算と合わせて適切に使用することが望ましいと考えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算に組み込み、適正に使用する。
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