2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03294
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久保 慶一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30366976)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 和解 / 戦争犯罪 / 戦争責任 / ユーゴスラヴィア / セルビア / 内戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、平成27年度に引き続き、旧ユーゴスラヴィア諸国を訪問し、資料収集、聞き取り調査を行った。具体的には、8月にボスニア・ヘルツェゴヴィナ、9月にセルビアを訪問し、現地の有識者やシンクタンクNGOのアナリスト・コンサルタントに対して移行期正義と民族間の和解の現状に関して聞き取り調査を行ったほか、現地の書店や大学図書館、国立図書館において資料の収集を行った。また、セルビアの有料新聞記事データベースを利用して、移行期正義と和解に関連する報道記事データの収集を行った。セルビアについては最近の世論調査データを入手することができ、旧ユーゴスラヴィア内戦中の戦争犯罪行為に関するセルビア市民の意識と、それを規定する要因についての分析作業を進めることができた。これらの一連の資料の分析により、以下の点がが浮かび上がってきている。まず、セルビアでは、市民たちの半数以上が自分たちの犯罪行為を認め、EU加盟を支持しながらも、政治勢力としては民族主義的な立場をとる右派勢力を支持している。つぎに、そうした世論の影響を受けているセルビア政府は、EU加盟プロセスにおける重要なステップの前では移行期正義を推進し近隣諸国に対して融和的な政策をとりながらも、選挙の前になるとそうした姿勢をあまり見せずに民族主義的な争点を強調している。こうした知見をふまえ、10月に開催された国際政治学会においてセルビアの移行期正義と和解に関する研究発表を行い、参加者から有益なフィードバックを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度と28年度の活動を通じて、当初の研究計画において予定していた通り、体系的な分析に必要なデータを集めることができた。この点で、おおむね順調に進展していると評価できると考えている。当初の研究計画に基づき、平成29年度には、暫定的な研究成果を国際学会にて発表し、フィードバックを得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は国内外の学会で研究発表を行い、そこで得たフィードバックをもとに研究成果をまとめることに注力していく。平成30年度中に最終的な研究成果をまとめて書籍として刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
3月までに納品を予定していた物品の一部の納品が間に合わず、若干の繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度からの繰越額については、昨年度に納品予定だった物品の購入代金として今年度中に使用することを計画している。平成29年度分の予算については当初の予定通りの内容で執行することを予定している。
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