2015 Fiscal Year Research-status Report
トクヴィルのアルジェリア論の再検討―デモクラシーと植民地帝国の関連の観点から
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15K03295
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松本 礼二 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30013022)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トクヴィル / アルジェリア / 第一次アルジェリア戦争 / 七月王政 / 植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一にトクヴィルのアルジェリア関係のテキストそれ自体の論点整理を行い、合わせて、研究史を検討した。特に、近年この問題についての代表的研究であるジェニファー・ピッツの業績(Jennifer Pitts, A Turn to Empire: The Rise of Imperial Liberalism in Brittain and France, 2005)の問題点を検討した。 第二にフランスのアルジェリア植民それ自体の歴史的経緯を、軍事征服と植民政策の両面について、明らかにすべく、文献を収集、検討した。 第三に、七月王政期に進行したアルジェリア征服についてのフランス世論の反応を調査した。この点は日本語でも平野千果子、工藤晶人の先行研究があるが、なお部分的で十分ではない。 この第二、第三の論点に関連して、2016年2~3月にフランスに出張し、特にエクサンプロヴァンスの国立文書館海外領土分館(Archives Nationales d'Outre Mer)において集中的な文献、資料調査を行った。トクヴィル自身に直接関わる資料はここにはないが、トクヴィルと対立してアルジェリア植民反対を強く主張したA・ディジョベールやムスリムに改宗してアブデル・カーディルに協力しながら、フランス軍に寝返った特異なフランス人、レオン・ロッシュ(幕末日本でフランス公使として徳川慶喜政権を後押しした人物でもある)に関する貴重な文献資料を見出すことができた。本年度における重要な研究成果であり、次年度以降も引き続き調査の機会を得たい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年2月に発症した病気療養のため、2015年度に終了予定だった科研基盤C(24530151)「東欧、中国の民主化とトクヴィルおよびシュンペーターのデモクラシー論」の研究期間を延長し、2015年9月に国際会議を開催するなど、成果の取りまとめに時間を取られ、本研究課題に全面的に集中できなかったのが一つの理由である。もう一つ、これは予定されていたことではあるが、2016年3月末日をもって早稲田大学を定年退職するに当っての事務作業が予想以上に多く、年末から年度末にかけて様々な事務作業に忙殺され、研究に十分な時間を割くことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、フランスでの資料調査を含む文献、資料の検討と収集を行う。特にトクヴィルの同時代の政治家、ジャーナリストでアルジェリア植民を論じたアメデー・ディジョベールやルイ・ヴィヨーの論考を検討したい。トクヴィルの議論の一つの特徴は、アメリカ人の西部開拓とフランスのアルジェリア植民とを重ねる視座にあるので、トクヴィルのアメリカ論、特にフロンティア開拓についての彼の問題関心の再検討を行う。 本研究の独自の視座は、トクヴィルが『アメリカのデモクラシー』第二巻で展開した軍隊・戦争論とアルジェリア植民論の関連を問う点にあり、この点はまだ具体的に作業していないので、今後の重要な課題となる。
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