2016 Fiscal Year Research-status Report
条約プロセスマネジメント―地球環境保全に向けた諸アクターの分散型応答の影響―
Project/Area Number |
15K03305
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
久保 はるか 甲南大学, 法学部, 教授 (50403217)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 地球温暖化(気候変動) / 再生可能エネルギー / 専門的知見 / Transnational governance / カリフォルニア / 漁業資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には、主として、①Building blocks approachへの変化を主導する立場にあるカリフォルニア州における気候変動政策及びエネルギー政策に関する調査を継続し、②比較のための追加的な事例研究の対象として掲げていた生物多様性・自然環境保全の分野から、国際的な海洋資源保全と国内の漁業政策を取り上げて調査を開始した。 ①に関しては、日本との比較のために、カリフォルニアにおける気候変動対策の目標(2020年目標と2030年目標)と当該目標達成のための計画について、立案過程と政策内容を調査した。比較分析のために、政策過程における専門家の役割・専門的知見の活用方法、関係する政府機関(CARB, CEC, CPUC)の権限・役割分担と機関間調整の実態、政治的なリーダーシップの影響の三点に論点を絞って分析を行っている。関連する政府機関がいずれも合議制組織であることから、専門的知見の活用とアウトプットとの関係を観察するのに適した事例であると考えている。その成果は、6月の環境法政策学会において口頭発表する予定である。 ②に関しては、国際的な海洋資源保全の枠組みと、日本国内における漁業資源管理政策について、基本的な知識を得ることから開始した。日本の漁業政策については、国際的な資源管理に関する要求や国内での沿岸漁業資源の枯渇を前にして、漁業権や慣習を基盤とする漁業法制度の歴史的な背景の下にこれまで構築されてきた自主的な管理体制にどのように変革が求められているのか、より具体的に述べると、国際的に外から与えられた「資源保全のロジック」に対して、既存の法制度・政策領域がどのような変容を迫られているのか、アクター(漁協、漁業調整委員会、水産庁、自治体の水産部)がどのように対応しているのか、そこでは専門的知見がどのように用いられているのか、という問題設定をしたうえで文献調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カリフォルニアでヒアリング調査を計画していたが、学内の業務との関係で、当初予定していたスケジュールで渡航することができず、4月にずれ込んでしまったため、その分進捗状況に遅れが生じている。 計画では、2016年度に、研究者がこれまで構築してきた研究の分析枠組みの検証と修正を行うとしているが、現在、27年度に亘って、この検証作業を継続中である。27年度にも引き続き検証・修正作業を行う予定である。 また、2016年度より、生物多様性・自然環境保全に関する調査を、国際的な海洋資源保全と日本の漁業政策に絞って進めているが、これまで未着手であった分野であるため、基礎的な文献整理と調査に時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
条約の国内実施に関する研究において、研究代表者がこれまで蓄積してきた事例研究は、オゾン層保護、気候変動対策である。気候変動対策においては、2016年にパリ協定が発効し、2030年までとそれ以降の取組みについて議論の途上にある。また、オゾン層保護に関する締約国会合においても、オゾン層破壊物質ではない(代替物質)が、温室効果が高い物質(HFCs)の規制をオゾン層保護のためのモントリオール議定書の枠組みで行うことが合意されたため、それを受けて国内でどのように国内法化するか(既存のオゾン層保護法の枠組みに入れ込むか否か)の議論が始まっている。これら現在進行中の事例も、分析に加えることとし、必要に応じてカリフォルニア州との比較のための調査も実施する予定である。また、漁業資源対策の事例分析についても、引き続き進めることとする。 これらの事例研究と並行して、引き続き分析枠組みの検証と修正を行うこととする。
|
Causes of Carryover |
カリフォルニアへのヒアリング調査を年度内に実施する予定であったが、学内業務等との調整により4月に渡航することとなったため、その分の旅費等経費を次年度に使用することとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月16日~22日、カリフォルニア州に滞在し、ヒアリング調査等を実施した。 訪問先:Professor Dan Kammen(Director of Renewable and Appropriate Energy Laboratory (RAEL), Professor in the Energy and Resources Group Energy and Resources Group (ERG), Professor of Public Policy Goldman School of Public Policy)、California Air Resource Board(気候変動政策におけるScoping Plan, Cap and Trade, economic analysis, HFCs regulationの担当者)、シンポジウムPhilomathia Forum 2017-Data Science and Sustainability-への参加。
|
Research Products
(1 results)