2020 Fiscal Year Research-status Report
トルコのEU加盟問題の今日的課題とヨーロッパ国際関係をめぐる研究
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15K03310
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
東野 篤子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60405488)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トルコ / EU / 日EUFTA / 加盟交渉 / 関税同盟 / コネクティビティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、コロナ禍のため海外での研究調査や学会報告を行うことが全く出来なかったが、デスクリサーチを集中的に実施した。とくに、2019年度までに実施してきたEU/トルコ関係の研究(具体的には、①トルコのEU加盟問題、②トルコ・EU難民合意、③トルコ・EU関税同盟の刷新)を一歩進め、日本外交へのインプリケーションも併せた考察を行った。また、コロナ禍という未曾有の状況を受け、EUが受けた経済的なダメージや政治的連帯の危機が、トルコを初めとしたEUの近隣諸国との関係にどのような影響を与えるのかを考察するため、EU2021-27年中期予算計画(MFF)およびコロナ復興基金の策定過程の分析も実施した。最後に、2019年度までの研究では、EU/トルコ関係の推移を軸として研究を実施してきたが、ヨーロッパに及ぼす中国の影響が無視できないレベルに達し、EU/トルコ関係にも様々なインパクトがあったことから、2020年度は中国ファクターを分析の軸に加えることを心がけてきた。 このようなデスクリサーチで得た研究成果を、複数本公刊することが出来た。最大の成果としては、EU/トルコ関係、EU/日本関係、トルコ/日本関係を潜在的な戦略的三角形と見なしつつ、この3つの関係の進展を阻んでいる要因について考察した英語論文を執筆し、査読を経てオープンアクセスで公開されたことが挙げられる。これ以外に、共著所収日本語論文を2本、査読なしオンラインジャーナルへの寄稿を日本語1本、オンライン学会での研究報告を英語1本および日本語1本、外交専門誌への寄稿を日本語で1本、公刊することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、①トルコのEU加盟問題、②トルコ・EU難民合意、③トルコ・EU関税同盟の刷新、の3点につき、在ブリュッセルのEU諸機関、EU加盟国外務省、トルコ外務省およびシンクタンクで合計3週間程度の聞き取り調査を予定していたが、コロナ禍ですべて不可能となった。また、聞き取り調査とは別途、ヨーロッパでの複数回の学会報告も予定していたが、それもキャンセルとなった。 組んでいた海外渡航予定がすべて潰れてしまったという観点からは、研究は遅れてしまったと結論づけざるを得ないが、これまでのデスクリサーチで得た研究成果を英文の査読論文としてまとめ、公刊することが出来たので、全体としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナ禍を受けた再々延長の結果最終年度となる。ウィルスの流行の収束やワクチン接種などの状況にもよるが、2019年度および2020年度に計画していたにもかかわらず海外渡航が出来ずに実施できなかった、現地での聞き取り調査を是非とも実現させたく考えている。具体的には、2020年度に予定していた①トルコのEU加盟問題、②トルコ・EU難民合意、③トルコ・EU関税同盟の刷新、の3点に関するインタビュー調査(在ブリュッセルのEU諸機関、EU加盟国外務省、トルコ外務省およびシンクタンク)に加え、④中国の影響力の増大がEU/トルコ関係に与える影響に関しても、インタビュー調査を実施したいと考えている。上記①②③④はどれも非常にセンシティブな内容を含むため、オンラインでのインタビューにはなじまない。現地に行き、対面でインタビューを実施しなければ十分な成果は得られないと考えている。 一方、参加を検討していた海外の主要学会はほぼすべてオンライン開催が決定しているため、成果の発信に最も適切な学会やワークショップを選んで参加する。一例を挙げると、6月にはイタリアの欧州大学院(EUI)のオンライン学会で報告することが決まっている。 研究成果の発信としては、ハンガリーのInstitute for Foreign Affairs and Trade(IFAT)およびイタリアのEUIで、それぞれ報告ペーパーが公刊される予定。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、合計で3週間程度予定していた海外調査と、4日間で予定していた海外での学会報告がすべてキャンセルとなったため、その分の予算を使用することが出来なかった。 2021年度の使用計画としては、コロナウイルス流行の状況次第ではあるが、主に海外調査旅費として使用する予定である。ただし、2020年度と同様に海外調査にも海外の学会報告にも行けない場合には、論文投稿料・オープンアクセス費等、成果発表のために使用する予定である。
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Research Products
(7 results)