2017 Fiscal Year Research-status Report
メコン地域主義の新たな位相-レジーム・コンジェスションと「下」からの越境的公共圏
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15K03311
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
五十嵐 誠一 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (60350451)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メコン / 地域主義 / 市民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から引き続いて「メコン・コンジェスション」に関する現地調査を行った。カンボジアではJICAの事務所、タイではASEAN Economic Ministers(AEM)-MITI Japan Economic And Industrial Cooperation Committee(AMEICC)、Thailand International Cooperation Agency (TICA)、Mekong Institute、United Nations Action for Cooperation Against Trafficking in Persons(UN-ACT)の関係者に聞き取り調査を行った。 市民社会ネットワークについては、ベトナムでMekong Migration Network(MMN)とWorld Wide Fund for Nature(WWF)、カンボジアでThe NGO Forum on Cambodiaの関係者にインタビューを行い、メコン市民社会ネットワークの実態把握に努めた。調査の過程で南部回廊とベトナム-カンボジアの国境の調査も行った。 研究成果としては、メコンを含む東アジアの地域主義と市民社会に関する理論的・実証的研究に関する『東アジアの新たな地域主義と市民社会』(勁草書房、2018年)を公表した。また、メコン地域を含む東アジアの移民労働と市民社会に関する論文を『国際移動と親密圏-ケア・結婚・セックス』(京都大学出版会、2018年)の中で公表した。加えて、メコンに関する国際シンポジウム「『メコン・コモンズ』から『メコン共同体』へ」を企画し、冒頭の特別パネルで「From Mekong Commons and Mekong Community」と題する報告を行い、「メコン・コンジェスション」の現状とメコン市民社会ネットワークについて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「メコン・コンジェスション」と市民社会ネットワークについての調査と研究は、当初の研究計画以上に進んでいる。前者に関しては、フィリピン・インドネシア・中国での調査を残している。後者に関しては、環境、開発、移民労働についての実態把握はほぼ完了しており、これらに加えて人身売買・人身取引に関わる市民社会ネットワークの調査を行う予定である。 地方政府間協力については、比較的長期の調査期間が必要となることから、調査がやや遅れている。 理論的枠組みについては、2018年1月に出版した単著『東アジアの新しい地域主義と市民社会』の中で「地域的ヘゲモニー」と規範の「地域適合化」という2つの概念を彫琢し、国家・非国家アクターによる地域秩序・地域規範をめぐる主導権争いに関する理論アプローチを完成させた。これをメコン地域主義の分析に援用する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「メコン・コンジェスション」とメコン市民社会に関する補足・追跡調査を行うとともに、調査が遅れているメコン地域で国境を越えた協力を展開する地方政府と地方共同体への聞き取り調査に重点を置く。 「メコン・コンジェスション」に関しては、中国、インドネシア、フィリピンに加えて日本のADB事務所や外務省への訪問も行い、実態把握に努める。中国では、「メコン・コンジェスション」に新たに関わりつつあるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関する調査も実施する。 市民社会ネットワークについては、Routledge社から出版予定の編著The New International Relations of Sub-Regionalismの中で全体的な考察と環境・開発分野に関する考察を行い、移民労働については、『国際移動と親密圏-ケア・結婚・セックス』(京都大学出版会、2018年)の中で具体的に分析を行っている。これらに関するフォローアップを行いつつ、今年度はネットワークが比較的発達しつつある人身売買・人身取引についての調査研究に取り組む。 地方政府間協力に関しては、東西回廊上にある国境地方行政単位と南北回廊上にある国境地方行政単位を事例として、地方政府機関やローカルNGOに聞き取り調査を行う。
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Causes of Carryover |
地方政府間協力に関する調査とフィリピン・インドネシア・中国などへの現地調査を実施しなかったため。
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Research Products
(5 results)