2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・ガバナンス・プラットフォームの動態――グローバル政治経営学に向けて
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15K03315
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 聡 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10339202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グローバル・ガバナンス / トランスナショナル・ガバナンス / 国連グローバル・コンパクト / プラットフォーム / 持続可能な開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究成果】 本年度の主な研究成果として、小論「持続可能な開発のトランスナショナル・ガバナンス──権威の多元化と新たなガバナンス・モード」の刊行が挙げられる。 【具体的内容】 本稿は、過去四半世紀におけるグローバル・ガバナンスの最も劇的な展開の一つとして、トランスナショナル・ガバナンス(非国家主体を主要な主体とする越境的ガバナンス)の台頭を論じた。まず、トランスナショナル・ガバナンスを「「非国家主体が独自に、ないしは国家や国際機関と共に、国境を越えて権威を行使することにより、2ヵ国以上にわたる所与の共同体の成員を公共の目標に導く実践」」と定義した後、権威の諸類型を示した。続いて、ガバナンス・モード(ガバナンスの方法・様式)を①政治、②政体、③政策に分類し、各々につき「ハイアラーキー・権限移譲・コラボレーション・オーケストレーション」(①)、「ハイアラーキー・市場・ネットワーク」(②)、「ハイアラーキー・市場(化)・規範・アーキテクチャ」(③)という理念型を示した。そして、以上の枠組を用いて持続可能な開発のトランスナショナル・ガバナンスの様々な取組を分析した。 【意義・重要性】 本稿の意義は、①本邦において研究の蓄積に乏しいトランスナショナル・ガバナンスを包括的に論じた点、②ガバナンス・モードにつき、国際政治学や国際法学などの既存研究を踏まえつつも独自の分析枠組を構築した点、③同枠組に基づき、持続可能な開発のガバナンスに関する企業を中心とした取組(イニシアティブ)を、最新の動向を踏まえつつ論じた点、の3点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・上述のように、本研究課題の基本的分析枠組をまとめた「持続可能な開発のトランスナショナル・ガバナンス──権威の多元化と新たなガバナンス・モード」を刊行することができた。 ・同論文で取り上げたテーマをさらに展開する論文(単著)の執筆に取り組んでいる。 ・2017年7月には、「責任ある経営教育原則(PRME)」の"2017 Global Forum for Responsible Management Education — 10 Years of PRME"に参加し、同Forumの中核チームの一員として、その準備段階からフォーラムの実施に至るまでの段階をつぶさに観察することができた。PRMEは、本研究課題の主な事例である国連グローバル・コンパクトのスピンオフ・イニシアティブである。 ・本研究課題に基づき「国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)」を獲得し、2017年9月よりカリフォルニア大学バークレー校にて国際共同研究を開始することができた(これは当初の計画にはない進展である)。
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Strategy for Future Research Activity |
・現在執筆中の、ガバナンス・プラットフォームに関する論文(共著)の執筆を継続する。質の向上を図るため、数回の改稿を経た上で投稿を目指す。 ・加えて、上述の単著論文の執筆も継続する。こちらも同様に数回の改稿を経た上で投稿を目指す。 ・これらはいずれも当初の研究計画に沿った内容のものであり、研究計画を変更する必要は特にない。 ・ただし、上述のように「国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)」の獲得に伴い、研究の比重を、当初の研究計画にあった実証研究から国際共同研究(ガバナンス・プラットフォームおよびガバナンス・エコシステムに関する概念的・分析的研究)へとシフトさせた。これは、同基金の趣旨(国際的研究ネットワークの形成)に鑑み、妥当なものと考えられる。
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Causes of Carryover |
本研究に基づき、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)を獲得し、本研究課題に関連した経費を当該基金によって賄うことができたため。
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