2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study of the Interpenetration model between East Asia Regional Formation and Small States: inthe Case of Laos
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15K03322
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森川 裕二 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (90440221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際関係論 / 小国論 / リージョナリズム / ASEAN |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の平成29年度、台頭する中国とラオスの二国間関係の実態を把握するために、本科研スタート前(平成20年度~25年度)に実施した予備調査の対象地(ラオス北部中国ラオス国境周辺地域、ビエンチャン・タートルアン湿地帯開発地域、南部タイ国境周辺地域)を二度にわたり再訪し定点観測するとともに、ラオス政府(計画投資省)担当者に中長期の開発構想と中国の対外投資の位置づけをインタビュー調査を実施した。過去10年間の現地調査結果と比較し、中国の「一帯一路」構想と連動した雲南省地域との交通網の連接性が飛躍的に向上するとともに、政治、経済、社会文化の各領域で対中依存度が増大傾向にあることが明らかになった。 ラオスの対中経済依存度の拡大は、ASEAN(東南アジア諸国連合)およびADB(アジア開発銀行)による1990年代末からのGMS(大メコン・サブリージョン)開発に代表されるインドシナ地域の総合開発の浸透効果と表裏一体の現象である。既存の「小国の政治学」によれば、一国家を超越した地域の形成は、小国の主権的な権力を相対化するベクトルと、小国の国民経済の統合を加速する、という相反する力学が作用する。ラオスの調査結果は、小国連合ASEANのリージョナリズムのインドシナ地域への浸透が国際安全保障面での安定に寄与し、ラオスが小国としての存在被拘束性を克服するダイナミズムを明瞭に示している。 本調査研究で獲得した、小国がASEAN地域主義と二国間関係の均衡戦略により、政治力を発揮する自律的ダイナミズムを、The New International Relations of Sub-regionalism: Asia and Europe, Routledge, 2018として7月刊行の予定であるほか、一連の調査結果をWorking Paperとして電子公開した。
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