2017 Fiscal Year Research-status Report
人の越境移動のグローバル・ガヴァナンスについての研究―EUアプローチを起点として
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15K03330
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡部 みどり 上智大学, 法学部, 教授 (80453603)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人の国際移動のグローバル・ガバナンス / 難民の国際的保護 / 出入国管理のグローバル化 / 安全保障と人の国際移動 / 人の国際移動と国際協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、当初の予定通り人の国際移動に関する国際社会とEUとの関係についての実証分析に従事した。近年現実味を増している人の国際移動のガバナンス(いわゆる「グローバル・マイグレーション・ガバナンス」)についてまずは概念整理を行い、東京大学駒場ワークショップ(「グローバル・マイグレーション・ガバナンス―多層性の動態的把握に関する一考察」」7月14日)、国際法学会(「人の国際移動のガバナンス:その多層性と水平性に関する一考察」9月5日)にて報告した。また、9月には世界銀行本部(ワシントンDC)に出向き、「移民に関するグローバル・コンパクト」に深く関わるKNOMADプロジェクトに関して、また、ニュースクール大学(ニューヨーク)では「難民に関するグローバル・コンパクト」成立に関わった人々と意見交換を行った。3月(平成30年)には、ベルギー(ブリュッセル)とスイス(ジュネーブ)を訪れ、移民と難民に関するグローバルコンパクトそれぞれに対するEUのコミットメントについて、EU対外活動庁(EEAS)、閣僚理事会、UNHCR、在ジュネーブEU代表部の担当者よりそれぞれ聴取した。また、ブリュッセルではエセックス大学主催による"EU-Japan Security Relations"というブックプロジェクトの会議に参加し(3月7日)、共著で1章を執筆した中で、EUとの比較の見地から日本のセキュリティ政策としての出入国管理政策について分析を行った。なお、同著はRoutledge社より近刊の予定である。 執筆面では、この他に、『EU学会年報』第37号(2017年)に「EUによる広域地域形成とその限界─対外政策としての出入国管理」論文を、『国際問題』に「欧州移民・難民危機とEU統合の行く末に関する一考察」論文をそれぞれ掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の目標をすべて達成している。米国、ベルギー、スイスへの出張で必要な情報を入手することができた。また、人の国際移動を対象とするグローバル・ガバナンスに関して一通りの概念整理をすることができた。加えて、主にジュネーブ、ワシントンDC、ニューヨークでの調査を通じて、他方、当初の計画以上に進展している点として、まず、グローバルな次元におけるEU外交と日本外交との関わりという、当初は予定していなかった研究への道筋を見い出すことが可能となった。次に、EUの対外戦略(グローバル・アプローチ)についての分析を進めた結果、欧州の研究者との共著の執筆及び欧州での国際学会における新たな報告の機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は、主に執筆に従事する予定である。前述のEU対外戦略についての分析は、S.カレッラ氏ほか編集本の1章として、Brill Nijhoff Publishersから当該年度内に出版予定である。また、東京大学出版会より出版予定で遅れている単著を前半に完成させる。後半は、9月にプラハで開催されるPan-European Conference on International Relationsに報告者として選抜されているためその準備に取り掛かるほか、同学会での報告を受けて国際ジャーナルへの投稿を検討している。
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Causes of Carryover |
国外出張旅費のうち一部を現地の研究協力者によりカバーしていただいたため、その分の支出の必要がなくなった。本年度は物品費に当てる予定である。
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