2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03333
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
泉川 泰博 中央大学, 総合政策学部, 教授 (60352449)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 同盟 / 分断戦略 / 拘束戦略 / 動的均衡 / 東アジア / 国際関係理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に関連する昨年度の出版実績としては、学術誌掲載論文2本(うち英文1、日本語1)および書籍の分担執筆1編(英文)であった。このうち、英文の著作2つは、日本の外交政策の分析に関する論文であるが、そこでは本研究で重要な概念である同盟分断戦略に関する知見を活かすことができたうえ、とくに米国首都ワシントンでの政策分析コミュニティでは一定の注目を集めることができた。また、日本語の論文に関しては、本研究で主眼を置いている同盟の動的均衡理論を発想に至る経緯で重要な役割を果たした、私のものを含む先行研究について整理し、これから論文にしていく同理論の潜在的意義について論じることができた。 他方、本研究の最終目標である同盟の動態的均衡理論そのものに関する研究は、残念ながら予定したほどは進まなかった。その理由については下の進捗状況の部分で詳述するが、2015年度末に米国の学会で論文を発表して以来、足踏み状態であった。ただし、その前段として位置付け、すでに海外の学術誌に投稿していた論文については、大きな進展があった。昨年中にこの論文は2回の再査読を経て、現在3度目の修正稿の提出にむけて作業を進めている。最終的に掲載が決定するかどうかは予断を許さないが、もし出版できれば、同盟拘束戦略(binding strategy)という鍵概念を正面から提示し、実証的に分析する初めてのものとなる。当該学術誌が国際関係論分野でのトップジャーナルの一つであることに鑑みれば、それは学術的に大きな意義があるものになると考える。 上記成果に加え、一般公開のシンポジウムやメディアでは、同盟の分断戦略と拘束戦略という観点から日中ロ関係や北朝鮮の対日米韓外交などに関する解説をする機会も数度あり、学術的なものではないが、そうした考え方の実際の政策分析への有用性を示すことができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出版面では、当初考えていた以外の本研究に合致する成果を出すことができたが、予算消化面では、公私ともに不測の事態が生じたため、思いのほか進まなかった。まず、所属大学で4月から全学の入試管理委員会副委員長に選ばれ、このため1年を通じて問題作成・管理および試験準備・実施で極めて長時間拘束されることになった。さらに現在所属学部の改革・改編でカリキュラム編成・人事・学内調整などに忙殺された。くわえて私的面では、遠い実家の親が病気入院から生じた様々な事態に対応するため、研究時間の確保が極めて困難になった。これらの状況で、本格的な研究の実施、特に予算の多くを充てていた海外出張は困難となり、これが予算の消化が進まなかった直接的原因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に述べた学務状況は今年も継続する見込みで、今年も本格的な研究は困難な状態が続く。このため、本年度が当初の最終年度ではあるが、無理な予算消化を計画するよりも、研究の1年延長を視野にも入れて研究をしっかりと進める所存である。まずは、現在査読の最終段階にある拙論を仕上げ、確実に海外で出版することに注力する。次に、すでに5月半ばにイェール大学のワークショップで、また秋には日本国際政治学会で発表の機会を確保しているので、それらで研究のこれまでの成果を報告する。こうしたことを経て、可能であれば今年度末、あるいは必要に応じて来年度に海外の学会で発表を行い、そこでまとめた論文を海外の学術誌に投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
最大の理由は、進捗状況欄に記入した通り、公私ともに研究を本格的に遂行していく妨げとなる公私の状況が生じたことである。このため、海外への調査に行く機会が失われたこと、および新たな学術論文を執筆する余裕がなく、その英語での校正などに取っていた予算が十分消化できなかった。物品費についても、本格的な研究が思うように進まなかったため、すでに調達していた物品でおおよそニーズを充足できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も厳しい学務状況が続くが、昨年よりは状況はよくなる見込みである。このため、最低海外(アメリカ)へは、調査もしくは発表のために、1~2度は各1週間程度の渡航を予定している。さらに、国内の学会においてもすでに発表が決まっており、旅費は昨年よりも大幅に必要となる見込みである。さらに、英語論文の校正もさらに必要となるので、こうした出費も増える。これらに加えて、昨年中に発見したがまだ発注できていない研究書についても、新しい論文を書くために入手する必要があり、物品費も昨年より大幅に必要となる。
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Research Products
(3 results)