2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト冷戦期におけるユーラシアの資源問題と境界領域をめぐる新しい国際関係
Project/Area Number |
15K03337
|
Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
上原 良子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (90310549)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日臺 健雄 埼玉学園大学, 経済経営学部, 准教授 (00633512)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 資源 / 外交 / エネルギー / 境界領域 / ユーラシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、資源問題と境界領域という二つの軸から、ユーラシアの国際秩序の変容の解明を目的としているが、2015年度は特に資源問題に焦点をあてて研究を進め、計6回の研究会を開催した。今年度は特に、新たな枠組みの創出と、各論点の報告を中心に研究を進めた。 ①各国の資源・エネルギー政策 日臺健雄「ロシアの資源外交」、上原良子「フランスのエネルギー政策と資源外交の歴史的展開」、また白鳥潤一郎「国際エネルギー機関IEA設立経緯の再検討」、「第三次中東戦争における先進国間外交」等の報告を行い、各国別のエネルギー政策および資源外交の展開について分析を深めた。白鳥は単著『「経済大国」日本の外交-エネルギー資源外交の形成、1967-1974年』を刊行し、資源外交という日本外交の新たな側面を明らかにした。また各自専門分野が異なるため、テキストおよび博物館等の見学を通じて、資源別の基礎的知識の共有を図った。 ②境界領域-ユーラシアにおける境界領域 極東・ウクライナ・中央アジアに関しては、日臺「ロシアにおける政治経済の現況」の他、ゲスト講師として国末氏「ウクライナ紛争後の状況」、伊藤亜聖氏「中国の対外戦略・一帯一路」等の報告を得、最新の動向が与える影響について考察した。ロシアの極東政策が大きく転換し、本研究が軸とする資源問題と領土問題、そして経済開発が連動し、境界領域をめぐる政策の変容について考察することができた。また上原は、EUおよび西欧においても境界領域における政治の動揺が拡大していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
専門分野と研究地域が異なる各自の分析を基礎として、共同研究により包括的な考察が可能となり、新しい分析枠組みが創出できた点は大きな成果であった。また2年目の研究課題にも前倒しで着手し、計画以上の進捗度を達成することができた。 ①資源-予定通り、ロシア・日本・フランスにエネルギー政策および資源外交について、歴史的展開と現状の両面から研究を行った。また各国別の研究から、資源をめぐる国際協調のメカニズム、とりわけ国際資源レジームの歴史的展開の重要性が改めて明らかとなった。特に石油に関しては、60年代末の第三次中東戦争から国際エネルギー機関IEAの成立を中心に、日本外交から考察を行った。これにより従来見落とされてきた石油を中心とする国際資源レジーム史構築の必要性が明らかとなった。 ②境界領域-研究計画では、2年目の課題であるが、ロシアの政策の新展開に伴い、1年目から前倒しで研究に着手した。またメディア等を通じて、EUの動揺とあわせてユーラシアにおける境界領域の重要性が取り上げられ、公的議論に貢献することができた。 ③研究ネットワークの形成-本科研の研究会を基盤として、異なる領域および地域の研究者の参加を得、資源外交および境界領域研究のネットワーク形成を促した点は大きな成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
①境界領域-1年目の研究によりロシアの極東政策、とりわけサハリンの重点化が新たな論点として浮上したため、2年目に、サハリン視察を行う予定である。特に極東の石炭政策を専門とする天野尚樹氏の協力のもと、歴史的展開および現状の新展開について、分析を深める予定である。その他、ユーラシアにおけるポピュリスムの台頭と民主主義の動揺、領土問題等、最新の動向を踏まえ、境界領域の諸相を解明する。また資源問題に加え、領土問題および経済開発が交錯し、新たな展開が予測されるため、重点的に研究を進める予定である。 ②国際資源レジーム史-1年目の研究により明らかとなった国際資源レジーム史について、2年目以降も引き続き取り組み、より実証的かつ多角的な分析を行う予定である。上原がサバティカルでヨーロッパに滞在する予定であるため、文書館等で実証的な研究を行う予定である。とりわけ第三次中東戦争から、フランスのIEA加盟までを分析対象とし、史料調査および共同研究を実施する予定である。 ③新たな課題:現状の変化-本研究が設定した資源および境界領域という両テーマについて、現状は大きく動いており、二つが連動し、国際関係の争点となっている。そのため、研究会のネットワークを活用し極東の他にイラン、中央アジアの資源開発の最新の動向についても分析を加える予定である。 以上の論点について、3年目に学会報告および研究書の刊行、さらに学会だけでなく社会への発信にも努める予定である。
|
Causes of Carryover |
・当初予定していたウラジオストック出張が、ロシアの極東重視政策・極東開発政策の提案により、延期となった。 ・このロシアの極東開発政策をより広域の視点から考察するために、2年次に予定していた境界領域研究を前倒しで実施した。そのためゲスト講師による知見の提供を得、謝金等を支出したが、残額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
・ロシアが新たに展開する極東開発政策に関して、エネルギーセクタ-を中心にサハリンの現状について、現地でのヒアリングおよび共同研究を実施予定である。
|
Remarks |
上原良子「今日のEUとフランス」『歴史と地理、世界史の研究』山川出版社、2015/5 (No.684), 41-44頁。 上原良子「市民的価値を壊す統治の緩み(耕論・欧州の境界)」『朝日新聞』2015年10月8日(朝刊)。 座談会(上原良子)「欧州危機-グローバル危機とヨーロッパの現在-」『神奈川大学評論』第83号(2016年3月)、4-33頁。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Book] グローバル資本主義と新興経済2015
Author(s)
河村 哲二, 李 捷生 , 王 東明 , 呉 暁林, 水上 啓吾 , 芹田 浩司, 日臺 健雄, 梶川 誠 ,グエン ハイ ドァン ティエン ドゥック
Total Pages
353(179-202)
Publisher
日本経済評論社