2017 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム戦争期の日・ビルマ・米関係―戦後日本の国際秩序構想の特質
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15K03342
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉次 公介 立命館大学, 法学部, 教授 (40331178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本外交 / ビルマ / ミャンマー / 日米関係 / 日米安保 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究事業3年目の2017年度は、①収集済みで、未読だった先行研究の分析、②過去2年間で収集した政治家や外交官の回顧録などの読解、分析、③外務省資料の分析に力点を置いた。もちろん、新たに刊行された研究書や回顧録などの収集も継続して行った。 また、2017年度は、研究成果のとりまとめに着手した。本研究事業の申請時から予定していた、ビルマを含む東南アジアを視野にいれた、日米関係史に関する新書(単著)の執筆を開始した。本研究事業と深くかかわる論点としては、ベトナム戦争が日本の対アジア外交や、日米安保体制に大きな影響を及ぼしたことを論じる予定である。 2017年度の取り組みとしては、サンフランシスコとニューヨークで視察を行った。サンフランシスコで訪問したのは、サンフランシスコ講和条約が結ばれた、サンフランシスコの戦争記念オペラハウスと、日米安保条約が1951年9月に調印されたプレシディオの下士官クラブ(現・ゴールデンゲート・クラブ)である。戦後日本外交、日米関係の出発点というべき場所の視察は、極めて有意義であった。 ニューヨークでは、2001年の米国同時多発テロが発生した、グラウンド・ゼロを訪問し、ワールド・トレード・センター跡地に開設された9.11メモリアル・ミュージアムなどを訪問した。米国同時多発テロは、冷戦後の国際秩序を大きく変容させるものであり、現代の国際秩序を理解するうえで、ぜひ理解しておかねばならない出来事である。「歴史とは、過去と現在の絶えることのない対話である」というE.H.カーの有名な言葉を借りるまでもなく、歴史を学ぶ上で、現代を深く理解することは欠かせない。9.11後のアメリカを訪問したことで、冷戦期の国際秩序のあり方や日本の国際的役割を「逆照射」する視点を得られたことは、大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理、外交文書などの収集、政治家や外交官の回顧録の読解などは、比較的順調に進んでいるといえる。研究成果のとりまとめという点においても、上記のように、ビルマや東南アジア情勢を視野に入れて、日米関係について論じる新書の執筆にとりかかっている。現在のところ、2018年度のうちに刊行できるよう、執筆作業に加えて、出版社との打ち合わせを行うなど、準備を進めているところである。 2018年度は、補足的な資料調査やインタビューを行い、原稿の完成度を高めることが、主な作業となる。 なお、2017年度は、本研究事業に直結する研究成果の公表(学会発表や論文等)はなかったが、それは想定されたことであり、研究の遅れを意味するものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、原稿の執筆を進め、新書の刊行をめざす。その過程では、補足的な資料調査に加えて、新たに出版される研究成果や、政治家・外交官の回顧録などをフォローする必要がある。 また、2018年度は、元外務事務次官へのロング・インタビューを行うことができる見込みであるため、冷戦期はもとより、冷戦後まで視野に入れて、日本外交の実像に迫り、本研究事業の研究成果がより充実したものとなるよう、努力したいと考えている。インタビューは東京で行われる予定であるため、応分の国内旅費が必要となる。 研究成果のとりまとめにあたっては、収集した膨大な資料の整理や、データのチェックなどについて、アルバイトを雇用し、効率的に作業を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
アルバイトを雇用し、外交史関係資料の整理や、データの入力などを依頼しようと考えたが、適切なアルバイト要員を確保できず、アルバイトの雇用費が想定よりも低かった。また、東京への出張を、別の研究費で支出することができたため、国内旅費が想定よりも低かった。 次年度においては、既にアルバイト要員を確保してあるので、アルバイト雇用費として使用する予定である。また、次年度は、元外交官へのロング・インタビューを東京で実施する予定であるため、国内旅費としても利用する。
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