2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03344
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
柴山 太 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (50308772)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英米軍事同盟の再編 / ロンドン外相会談 / 英米加軍事同盟 / 対立の制度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の研究は、2016年度の最後に実施した米国史料調査で収集した史料を解読し、それに基づき、現在執筆中の『冷戦の起源1942~1947年』の原稿を書き進めた。これまでの発見結果は、第2次世界大戦中に、英国が米国に働きかけた、戦後における英米軍事同盟の継続要請は、かなりの頻度に及ぶことがわかった。と同時に、米国政府・軍部内では、すくなくとも1945年9月まで、英米軍事同盟の継続について、否定的意見も多く、継続派=対ソ用再編派は少数と言い得た。もちろん対ソ用再編は、ソ連との対立の制度化を意味する。この一大変化は、どのようにして生じたのかを解明することが、2017年度の課題となった。収集した史料からわかったことは、1945年9~10月のロンドン外相会談における、ソ連側の強硬姿勢、とりわけ東欧問題と東地中海問題におけるそれで、英国のみならず米国も戦後協調の芽がないと判断したこと、さらには、米軍内部で大戦中から親ソ反英的立場をとってきた、古株の陸海軍参謀たちが、反ソ姿勢の採択を求めるという変身ぶりのあと、引退したことがわかった。この親ソ反英の古株参謀たちの変身および引退後、米軍内部では、ソ連に関する一大研究がなされ、そのなかで、将来とりわけ20年後、ソ連の国家総力戦能力が米国のそれを上回る可能性が提示された。ここにおいて、総力戦の観点から、米国は総力戦能力における優位を保つために、英米軍事同盟を戦後世界でも継続することを決め、英軍が行ってきた対ソ用再編に合意することを決めた。この結果、英米両軍は、英米軍事同盟の対ソ用再編を決め、さらに両者は、彼らの上司である両政府首脳に対して、これを受け入れるように働きかけた。しかも最も断りにくい、英米そしてカナダの軍事同盟として。これに対するソ連側の反応を調査することが、2018年度の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状での問題点は、本来2017年度に行うべきであった、ロシアでの史料調査を行っていないことである。またそれに基づく、ロシア語史料収集の遅れ、そしてそれに基づく原稿作成が進んでいないことである。史料調査を行えていない理由は、まだ史料調査に必要な基礎的調査が不十分であること、そしてロシアでの調査が十分な成果を出し得る環境が、現地で整っていないことがある。実は、時を経るごとに、史料へのアクセスが規制される状況にあり、この障害をどのように超えるべきかについて、いろいろな研究者の意見を聞きながら、準備を進めているところである。また史料収集の基礎となるべき、ロシア語の習熟においても、読解力の遅さを乗り越えられていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシア語の習熟度アップについては、現在2名の先生方について、ロシア語の一次資料とりわけ会議録と書簡をいっしょに読んでもらい、その結果は、本の原稿として利用しているが、これを継続する。またこの継続により、基礎力を向上させ、来る史料調査に備える。他方、史料調査に関する、情報をさらに集め、よりよい形で史料調査ができるように、他の研究者の援助を求めることとしたい。
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Causes of Carryover |
2017年度に行うべきであった、ロシアでの史料調査を行えていないことが最大の理由であり、それは最終年度にあたる、2018年度に行うつもりである。また2018年度においては、最大限の努力を行い、本の原稿を完成できるようにし、そのために必要な史料収集も継続したい。
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