2016 Fiscal Year Research-status Report
インド太平洋における地域協力制度の形成・発展に関する研究
Project/Area Number |
15K03345
|
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉松 秀孝 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (90300839)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | インド太平洋 / 地域協力 / 制度形成 / インフラ開発 / 貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インド太平洋という地域枠組みの下で、貿易、交通インフラといった特定領域における地域協力の実態と課題を分析し、アジアにおける国際協力の発展に向けた提案を示すことにある。すなわち、日中に代表される域内主要国が地域公共財の提供を通した共同利益の形成・促進と地域における政治的影響力の保持・拡大という2つの政策目標を実現するためどのようにリーダーシップを発揮してきたのか、国際レジームによって醸成されてきた規範や規則の浸透が地域ガバナンスの形成にどのような影響を及ぼしているかを政策領域ごとに比較・検討し、アジアにおける地域協力の発展に向けた課題と展望を提示することを目指している。 28年度は前年度の理論的研究を基に実証研究へと進んだ。特にインフラ整備を巡る状況について考察を進め、日本・中国というインド太平洋における2大国が、地域における政治的な影響力や通商上の利益を確保するため、どのような誘因の下でどのような政策を実施してきたのか、日中間の競争関係がどのような結果を生み出しているのかを考察した。こうした考察をまとめた内容をロンドンで開催された東アジア合同研究学会(JEAS)において発表し、今後の発展に向けた多くの知見を得ることができた。またもう一つの事例である貿易についても、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉がどのような要因によって進展しているのかを考察した。特にTPP交渉に参加した日本の動きとTPP交渉の進展をけん制したい中国の動き、独立したアクターとしてのASEANの状況、さらにはインドにおける普遍的ガバナンスの規範の受け入れが交渉の進展にどのように影響を及ぼしているかを探究した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実証分析を始めてみると、交通を含むインフラ開発・投資がインド太平洋の大きな政策課題となっており、日本の輸出政策、日中の競争関係について深い考察が必要であるということがわかった。こうした重要性を踏まえて、インド太平洋におけるインフラ開発に関して複数の論文に纏め上げることを視野に入れて研究を進めることにした。貿易分野については、米国のTPP離脱と言った変則的な動向もあり、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の進展・妥結にはもう少し時間がかかると思われるため、交渉プロセスにおける主要国の政策スタンスや規範や規則の影響について更に丁寧な分析を進めることにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度も引き続き実証データの収集・分析を進め、実証結果をまとめあげていく。貿易分野において交渉の進展が遅く十分な情報が得られていないため、追加の聞き取り調査を行うことを予定している。また研究の最終年度でもあるため、主要な国際会議で発表することで研究成果の還元を図っていくとともに、主要な学術誌において研究成果をまとめた論文を出版していくことを目指していく。
|
Causes of Carryover |
当初28年度に予定していた調査出張が、日程調整がつかず実施できなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
情報収集のための調査出張を、29年度に実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)