2016 Fiscal Year Research-status Report
手持ち現金が経済人の合理性に与える効果の分析:経済実験によるアプローチ
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15K03353
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 広雅 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (80352540)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 手持ち現金 / 不正行為 / 参照点 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、目には見えない人々の参照点の違いが、彼らが不正行為を行うかどうかという意思決定に影響を及ぼすか否かを明らかにするため、経済実験を行った。実験の流れは以下の通りである。まず、実験参加者の参照点を把握するために、実験が開始される前に全ての参加者に「あなたは今日の実験でどれくらいの金額を獲得できると期待しているか」という質問した。その後、各被験者に2000円を渡し、「12組の数の中から足して10になる2つの数を見つける」という作業をさせた。各被験者に20問の問題が与えられ、5分間の間に出来るだけ多くの問題を解くように指示した。最後に、実験終了後、各被験者に自ら正解数を報告してもらい、それらの正解数に応じて実験謝金(正解数×100円)を払った。実験は広島市立大学で平成28年6月及び10月行われ、164名の学部生が被験者として参加した。その結果は、参照点の違いによって被験者の不正行為の意思決定が異なるものであった。まず、期待獲得金額が高い被験者は、期待獲得金額が低い被験者より、不正する確率が統計的に有意に高かった。このような行動の変化は損失回避によってもたらされるものと推測される。つまり、参照点が高い被験者は、実際の正解数でもらえる実験謝金が自分の参照点より低かった場合、損失回避により正解数を多く報告する傾向があった。また、不正の程度を表す不正の数に関しては、期待獲得金額が高い被験者は、期待獲得金額が低い被験者より、統計的に有意に多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成27年の成果を踏まえて、人々が不正行為をを行うかどうかという意思決定に影響を及ぼす要素に関する予備実験と本実験を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は参照点効果や現金を目の前にすることなどで人間の不正行為を抑えるか否かに関する予備実験と本実験を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施した経済実験において、募集した被験者の人数が計画より少なかったため、未使用額があった。また、平成29年度において、新たな経済実験を行う予定であるため、平成28年度の未使用額と平成29年度の所要額をあわせて使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度において参照点効果や現金を目の前にすることなどで人間の不正行為に影響を及ぼす要素に関する予備実験と本実験を行っていく。
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Research Products
(3 results)