2017 Fiscal Year Research-status Report
情報共有とリーダーシップのゲーム理論的・実験的研究
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15K03354
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
末廣 英生 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (30162837)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リーダーシップ / ゲーム理論 / 信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度から30年度で行う本研究は、第1段階で理論研究、第2段階で実験研究の、2段階で進める計画である。平成27年度は第1段階の理論研究に着手し、生産性に関する個人判断を形成するプレーヤーが、他人に先んじて努力するかどうかを自由意志で選べるモデルに、チーム生産性の判断形成プロセスを組み込んだモデルの均衡を理論的に研究して、個人の生産性判断の相関度合いが一定値よりも低い場合にリーダーシップが起こり、高い場合には起こらない、という結果を導いた。 平成28年度は、この一般的な結果をもとに、情報共有とリーダーシップの関係を実験検証するための、実験可能な離散モデルの開発を行い、生産性の個人判断の相関度合いの区分に、単なるリーダーシップ均衡の存在の有無だけでなく、生産性の個人判断に照らして過大な努力によるリーダーシップが必要かどうかの区分が必要であることが分かった。 平成29年度は、この離散モデルの研究成果をもとに、実験設計研究を行った。その結果、情報共有の度合いに応じてリーダーシップ均衡の存在・非存在がともに生じるには、リーダーシップが均衡で起こる経路上で、リーダーとフォロアーが選ぶ努力水準が非対称となり、したがってプレイからの利得も非対称とならざるを得ないことが分かった。これは、リーダーシップの生起に、被験者の不公平回避選好が関与することを意味する。そこで、実験データを適切に分析するには、実験に被験者の不公平回避選好を測定する補助実験を組み込む必要があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画に対し、理論予測を検証する実験設計に幾つかの困難があることが、研究の過程で明らかになった。1つは、平成28年度に取り組んだ、情報共有とリーダーシップの関係を分析する、生産性判断の形成プロセスを組み込んだ一般モデルの離散化で、リーダー行動の追加区分が必要と分かったことである。もう1つは、平成29年度に取り組んだ離散モデルに基づく実験設計研究で、被験者の行動に被験者の不公平回避選好が関与することが避けられず、被験者の生産性判断の要因と不公平回避選好の要因を、実験データで識別できるように実験設計する必要があることが分かったことである。これらの事情から、実験設計に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の実験設計研究によって、もともと目指していたリーダーシップ実験に、被験者の不公平回避選好を測定するための補助実験を組み合わせる実験設計に到達できた。この設計に従い、平成30年度は学生を被験者とする実験を実施し、データを収集して、データ分析を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画では平成29年度に実験を実施する予定であったが、実験設計研究の過程で実験設計に幾つかの理論上の困難があることが分かり、それを解決する実験設計を工夫する必要があったため、予定していた実験が実施できなかった。
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