2015 Fiscal Year Research-status Report
国際労働移動と児童労働からの接近による途上国の貧困問題解消に関する理論研究
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15K03356
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
島田 章 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60196475)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際労働移動 / 貧困 / 児童労働 / 人的資本形成 / 貧困の罠 / 世代間外部性 / 教育供給 / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
貧困による親の労働のための外国への移動が子供の報酬をともなわない労働供給の変化をつうじて、子供の教育と人的資本形成におよぼす影響を調べた。分析には重複世代モデルをもちい、親が家計の生存のために外国へ働きに行き、そのために子供は報酬をともなわない家の仕事を担わなければならない、と仮定した。また世代間外部性を仮定した。 そして子供の報酬をともなわない家の仕事の負担を減らしたり、親が賃金の高い国へ働きに行くことを促進したりしても、必ずしも子供がよりたくさん教育を受けることにつながるとは限らないことを明らかにした。また動学的なコンテクストにおいて、貧困の罠が生じることを明らかにした。この研究の貢献は、従来の研究とは異なり、児童労働で報酬をともなう労働よりも大きな部分をしめる報酬をともなわない労働に着目し、そのような労働が行われるもとでの人的資本の動学を明らかにしたことである。 またこの研究を発展させた次の研究は、労働のための外国への移動の可能性の変化が人的資本形成におよぼす影響を調べた。分析には世代重複モデルをもちい、世代間外部性に加えて個人の生まれつきの能力が異なる、と仮定した。 そして労働のための外国への移動の可能性の上昇が人的資本を拡大するかどうかを調べ、教育供給が価格に関して弾力的であれば移動の可能性の上昇が人的資本を拡大し、非弾力的であれば縮小させることを明らかにした。また教育供給が価格に関して弾力的であれば、貧困の罠に陥る可能性があることを明らかにした。この研究の貢献は、教育供給を明示的に取り入れて、国際労働移動の可能性が人的資本形成におよぼす影響を明らかにしたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童労働に関してほぼ未着手であった報酬をともなわない児童労働を分析するためのモデルを構築することにより、国際労働移動のもとでの児童労働と貧困に関する研究の基盤が得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
報酬をともなう児童労働も分析に含める。また地域間の賃金格差が労働移動のパタンの選択を通じて、人的資本形成におよぼす影響を分析する。
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Research Products
(6 results)