2017 Fiscal Year Research-status Report
国際労働移動と児童労働からの接近による途上国の貧困問題解消に関する理論研究
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15K03356
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
島田 章 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60196475)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 労働移動 / 頭脳流出 / 賃金格差 / 人的資本の移転可能性 / 頭脳獲得 / 留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初めの研究では、人的資本が国際間で完全には移転可能ではなく、また人々が外国で働くだけでなく外国へ留学もできるもとで、労働の送り出し国の政府が国内で教育を受ける人々への教育補助金または外国で教育を受ける人々への教育補助金を支出することによって人的資本の流出を緩和できるかどうかを調べた。そして労働の送り出し国が先進国であり労働の受け入れ国との賃金格差が小さい場合には、いずれかの教育補助金を支出することにより、頭脳流出(brain drain)を防げることが分かった。頭脳流出を防ぐためにどちらの教育補助金を支出したらよいかは、移転可能性の大きさによって決まる。一方、労働の送り出し国が途上国であって労働の受け入れ国との賃金格差が大きい場合には、いずれの教育補助金を支出しても人的資本の流出を防げない場合があることが分かった。 次の研究では、人的資本の国際間での移転可能性が個人の教育需要や労働移動の決定におよぼす影響を調べ、これに基づいて移転可能性の違いが頭脳流出または頭脳獲得(brain gain)のどちらを生じさせるかを定常状態においてだけではなく、短期においても調べた。そして移転可能性が低い場合、個人の生まれつきの能力にかかわらず、個人の教育需要は小さくまた個人は外国へ労働移動しようとしないが、移転可能性が高い場合、個人の教育需要が大きくまた生まれつきの能力が高い個人は外国へ労働移動しようとすることが分かった。また労働の受け入れ国との賃金格差が小さければ、たとえ移転可能性が高くても、労働の送り出し国は定常状態においても短期においても頭脳流出を経験することが分かった。さらに労働の受け入れ国との賃金格差が大きく移転可能性が高ければ定常状態においては頭脳獲得が生じるが、短期においては頭脳流出が生じ、このため短期と長期で人的資本の蓄積にコンフリクトが生じる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人的資本の国際間での移転可能性が教育や人的資本の形成におよぼす影響を分析することにより、国際労働移動のもとでの児童労働と貧困を研究するための基盤を発展させたから。
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Strategy for Future Research Activity |
貧困の根本原因の1つである国際間での人的資本の格差が教育需要の違いをつうじて人的資本形成にどのような影響を及ぼすかを分析する。
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Research Products
(3 results)