2018 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental studies on the effects of labor-management negotiations on workers' social preferences
Project/Area Number |
15K03358
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
山森 哲雄 獨協大学, 経済学部, 准教授 (50552006)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チープトーク / コミュニケーション / 不完備契約 / モラルハザード / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、労使コミュニケーションのあり方が労働者の規範的動機に及ぼす影響について検証することで、コミュニケーションが労使紛争にもたらす帰結を明らかにすることである。本研究におけるすべての実験はGift Exchange Gameをベースにしている。2015年度および2016年度に実施した実験では、労働者の「要求」の伝達と「意図」の伝達という事前コミュニケーションが、いずれも労働者の努力水準を低下させ、モラルハザードの問題を(コミュニケーションが存在しない場合と比べて)悪化させることを明らかにした。また、2017年度に実施した実験では、労使の継続的な関係(同じペアでの繰り返しプレイ)を前提とした場合、労働者の「意図」の伝達が労働者の規範的動機を毀損するという結果は頑健であったものの、労使の協調が促進されることでモラルハザードが緩和されることを発見した。 本年度は昨年度の実験を再実験するとともに、労使の継続的な関係において、労働者の「要求」の伝達と「意図」の伝達という2つの事前コミュニケーションの効果の違いを検証した。主な実験結果は以下の通りである。第一に、いずれのコミュニケーションも労働者の規範的動機を毀損し、各賃金に応じた労働者の努力水準を低下させる。第二に、労働者の「意図」の伝達は使用者の提示する賃金水準を上昇させることで総余剰を増加させる。最後に、労働者の「要求」の伝達は使用者の提示賃金に影響を与えることはなく、結果的に総余剰を減少させる。すなわち、労働者の一方的な賃金要求は労使の協調を阻害し、モラルハザードの問題を悪化させることになる。 また、本研究の成果を論文“Endogenous Social Preferences in Bargaining and Contract Enforcement”としてまとめ、国際的な査読付学術雑誌に投稿した。
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