2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03364
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
須賀 晃一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00171116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若松 良樹 学習院大学, 法務研究科, 教授 (20212318)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 行動選択基準 / 情報的基礎 / カント的定言命法 / 自由 / 責任 / 主体性 / 合理性 / パターナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、我々のとるべき行動は、他者への影響や社会からの反応をどう捉えるかによって異なる。個人的自由が最大限に許容されている場合、合理性の仮定の下ではナッシュ的行動が生じる。しかしながら、いったん他者への様々な影響やその反作用、それに基づく環境の影響を帰結以外も含めて考慮しなければならなくなると、あらゆる相互作用を含むほどに定義域を拡張して行動選択を考えなければならない。仮に帰結の次元ですべての影響や相互作用を捉える場合でも、帰結に至る経路によって評価は異なりうるので、正しい行動を一意に決定するためには、経路からの独立性のような条件が必要となった。 第2に、経路からの独立性のような条件をさらに厳格化していくと、無条件的に正しい行動といった概念に辿り着く。これはカントの定言命法のような行動理論が示している義務論的行動原理であり、行動の帰結に全く言及せずに行動選択ができるため簡便であるが、他者への影響を全く考慮しないという意味で限定的である。一般的な社会状況の下では、具体的に個人間の公平性を扱う中で正しい行動とは何かを考える必要がある。そこで、カントの定言命法を若干緩めた条件の下で再定式化し、それによって正しいとされる行動を特徴づけるという作業を行った。すなわち、様々な情報的基礎の下で、他者の状況が同じ時に同じ行動を採るのが正しいといった定式化を行った。 第3に、合理性に関する、行動経済学に基づくリバタリアン・パターナリズムの主張と、通常の経済学による自由放任主義の立場とを比較検討することで、両者が前提とする行動基準としての合理性が持つ問題点を明らかにした。両者ともにあまりに極端な議論に陥っているので、どこに脱出口を見つけ出すかを検討した。1つはサイモンの限定合理性であり、もう1つは生態学的合理性である。両者とも『足るを知る』という中庸の思想につながる意味を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度も具体的テーマと理論的テーマに分け、適切な役割分担の下に資料収集し議論を深めた。センの潜在能力アプローチに基づく行動選択基準については28年度も継続して行ったが、個別テーマとして、功利主義の対極にある義務論とその代表であるカント的行動原理についても検討を行った。 行動選択の基準として現実の世界で決定的な重要性を持っているのが、義務の概念である。各人の社会的な地位に対応して様々な義務があり、それに従う行動選択は社会構成員としての不可欠な資質とさえみなされる。義務論に与する極端な立場は、カントの定言命法によって表現される行動原理である。この行動原理は行動の帰結に全く言及せずに行動選択ができるため簡便であるが、他者への影響を全く考慮しないという意味で限定的である。そこで、カントの定言命法を若干緩めた条件の下で再定式化し、それによって正しいとされる行動を特徴づけるという作業を行った。すなわち、他者の状況が同じ時に同じ行動を採るのが正しいといった定式となるが、センの潜在能力アプローチなどに対応して、様々な情報的基礎の下で定式化を行うことで、状況に応じた正しい行動を特徴づけることができる。 前年度に続いて、行動選択基準の情報的基礎に関わる哲学的問題を扱った。効用と権利、自由と責任、権利と義務、帰結とプロセスなどの情報的基礎を、行動選択基準との関連でどのように扱うことができるか、またそれらの情報的基礎の持つ社会的意味と価値について十分な検討を行った。昨年度の研究を通じて、行動選択基準を包括的に比較検討するためには、情報的基礎のメタレベルでの吟味が必要であることが判明したので、メタレベルと日常レベルを分ける際に情報的基礎が果たす役割について検討を続けている。 以上のように、いずれのテーマについても大体において当初の予定通りに、本研究は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度に当たるので、研究のまとめとして、行動選択の総合的規範理論の構築に挑戦する。社会的選択理論、政治哲学、法哲学などで展開されてきた議論の延長上に、本研究課題の目標を設定してきたので、行動選択基準の公理的特徴づけに利用される様々な公理が、種々の規範理論において占める位置を確認しながら、全体的な体系性を考察する必要がある。我々の日常的な行動選択の問題が特定の目的論や義務論だけで語られるもの出ないとするなら、公理間、あるいは原理間の優先順位も含めた『行動選択基準の構想』にまで議論を発展させるのでなければならない。この目的の実現を目指して、可能な限り研究を前進させたい。具体的に、以下のテーマを掲げて研究を進める。 [個別テーマ]主体性と自由 行動選択の規範として最も重要なものは何かと問われれば、人はおそらく主体性と自由を挙げるであろう。しかし、主体性と自由を情報的基礎に据えるには、更なる議論が必要なように見える。自由を測るための測度や主体性の構成要素は立場によってあまりに隔たりが大きい。こうした問題の解消を図るための体系化が必要であろう。 [理論的体系化のテーマ]行動選択の総合的規範理論の構築 研究のまとめとして、これまでの知見の蓄積を振り返り行動選択基準の情報的基礎を整理し直す。すなわち、センの潜在能力アプローチを参照点としながら、自由と責任、権利と義務、帰結とプロセスなどの情報的基礎を、行動選択基準との関連で再整理する。それに基づいて具体的な行動選択基準の公理化を行う。そして、規範理論におけるそれらの基準の位置づけを検討し、行動選択の規範理論の構築に挑戦する。全体的な構成は、様々な行動選択基準の定式化とその情報的基礎、またそれらの行動選択基準の公理化、構成する公理の比較検討、現実問題への適用可能性についてである。
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Causes of Carryover |
パソコンを購入するため日本HPのDirectPlus販売に2016年12月に発注し、クレジットカードによる決済が完了した。数日後に、部品の一部に入荷の遅れがあり、出荷までに時間がかかるとの連絡が入ったが、2週間程度のことだという通知であったので到着を待っていた。その後さらに遅れるとの連絡が入り、結局科研費の使用期限までには入荷の見込みがないことが判明したので、いったんキャンセルし、年度が変わってから発注し直した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度4月には当初予定していたパソコンと類似の製品を発注し、すぐに入荷したので、現在は順調に作業を進めている。
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Research Products
(7 results)