2016 Fiscal Year Research-status Report
自発的協力、本源的動機及び社会環境の役割:理論とフィールドワークによる実証
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15K03366
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柿中 真 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (40421234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 恭平 立教大学, 経営学部, 特任准教授 (60710605)
小谷 浩示 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (80422583)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自発的協力 / 本源的動機 / 社会環境 / 競争社会と協力社会 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
公共財供給など様々な自発的協力問題において、各個人の本源的動機は各個人及び社会全体の自発的協力行動を決定する上で重要である。しかし、その役割は地理的・信条的・歴史的背景や都市・農村など人々が直面する社会環境に大きく依存している。本研究では、人々を取り巻く社会環境と倫理的動機・社会的動機等から成る本源的動機の関係性を考慮した経済理論モデルを基に、社会環境が本源的動機及び自発的協力行動にどのように影響 を及ぼすのかについて、実験やサーベイ調査等フィールドワークを通じて理論的かつ実証的に分析することである。 平成28年度は前年度に引き続き、理論研究及び実証研究に取り組んだ。実証研究においては、バングラデシュで実施した社会フィールド調査で得られたデータを基に、社会環境の違い(特に資本主義・競争的な社会環境と協力的な社会環境に着目した形で)が本源的動機及びそれに伴う協力行動に与える影響を分析した。社会がより競争的になるに従い、人々はより社会的に協力的ではなくなるという実証結果が得られた。持続的社会を保つために、人々の協力行動が必要となるが、本結果は、現代社会が競争的になるにつれ、社会経済の持続性を損なってしまうという危険性を提唱した内容となった。本実証研究の成果を纏めた論文は海外英文専門雑誌(PLoS ONE)にて出版した。また、同じくバングラデシュで実施した社会フィールド調査で得れたデータを基に、社会環境が異質な本源的動機を分析することを目的とした論文を現在取り纏め中であり、ワーキングペーパーとして発表した後、海外英文専門雑誌に投稿する予定である。 理論研究においては、これまでの実証分析で得られた結果を考慮しつつ、社会環境の違いがどのような本源的動機に影響を及ぼし、ひいては、自発的協力行動を決定づけるのかを包括的に議論するための経済モデルの構築を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証分析の進捗状況は非常に良好である。一方、理論分析の進捗状況は若干遅れがあるものの、既にフレームワークは出来上がっているため、特段の問題はないと見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論モデルの完成を精力的に目指しつつ、引き続き実証分析に取り組むこととする。具体的にはバングラデシュを含めたアジア地域でのフィールドワークを実施し、社会環境、本源的動機及び自発的協力行動の相互関係を理論的・実証的分析を行う予定である。本研究結果を基にして、社会環境と本源的動機の関係性を考慮しつつ、人々を取り巻く社会環境が本源的動機及び自発的協力行動にどのように影響を及ぼすのかについて議論する。その上で、異なる社会環境で自発的協力を促す本源的動機を特定化・比較検証し、社会厚生上、各々の社会環境に適した効率的な政策を提唱することを目指す予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度に実施予定分のフィールド調査が現地との調整に時間がかかり、今年度にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に実施予定分のフィールド調査が今年度にずれ込んだため、今年度に実施する予定である。
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