2016 Fiscal Year Research-status Report
イスラム・バンクレント理論構築とムラバハ症候群の制度的解釈
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15K03374
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
鈴木 泰 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (00350752)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イスラム金融 / イスラム銀行 / 金融セクターレント / バンクレント / ムラバハ症候群 / インドネシア / マレーシア / ムシャラカ |
Outline of Annual Research Achievements |
イスラム・バンクレント(イスラム銀行が評判・フランチャイズバリューを維持するために捕捉すべき超過利潤)理論の精緻化をはかるための実証研究を進めた。ムスリム人口の多いインドネシアを中心に、バングラデシュ、マレーシア、パキスタン及びGulf Cooperation Council (GCC)湾岸諸国におけるイスラム銀行と通常銀行とのパフォーマンス比較を行い、3つの論文にまとめた。多少の例外はあるものの、基本的に、バンクレント捕捉機会が大きいことと、市場シェアとの有意な因果関係があることが実証できた。 アジア最大のムスリム人口を擁するインドネシアにおいて、イスラム銀行が占める市場シェアが著しく低い(5%未満)というパズルに対して、イスラム銀行の市場シェアが20%を超えるマレーシアとのイスラム銀行規制の違いに注目し、幾つかの仮説の検証を行った。マレーシアにおいては、イスラム銀行を育成するにあたり、一定の保護政策(一定のバンクレント捕捉機会の保護)を行ったのに対し、インドネシアでは、そうした学習レント捕捉機会をイスラム銀行に与えないままに、通常銀行との競争を促進したことが、イスラム銀行の育成機会を摘んでしまったとの仮説を、現地銀行からのヒアリングを含め、検証した。これらの研究成果の一部は、Routledge社から出版した「Banking and Economic Rent in Asia」の章として発表を行った。 今後、インドネシアにおけるイスラム銀行ではムシャラカと呼ばれるエクイティファイナンスのポートフォリオが比較的大きい理由について分析を進める。これまでの現地調査からは、ムシャラカファイナンスの実態は、アセットベースのムラバハへのバックファイナンスとなっているケースがあることが窺え、その実態とメカニズムについて整理・分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シンガポールおよびマレーシアを拠点に現地でのデータ収集および分析ができたため、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ムラバハ症候群(アセットベースの比較的リスクの低いファイナンスに特化する傾向)の解消策を議論するために、ムシャラカ等のエクイティファイナンスの動向およびその課題について分析を進め、加えて、イスラム銀行のガバナンスのあり方について研究を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究は予定通り遂行したが、少額の金額が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)