2016 Fiscal Year Research-status Report
ジェイコブ・ヴァイナーの経済思想―「中庸」の“リベラリスト”
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15K03378
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
木村 雄一 日本大学, 商学部, 准教授 (80436740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジェイコブ・ヴァイナー / ニコラス・カルドア / 関税同盟 / 自由貿易 / シカゴ / ナイト / ケインズ / ケインジアン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ジェイコブ・ヴァイナーと彼に関係する経済学者達(例えば、ライオネル・ロビンズ、フリードリッヒ・ハイエク、ニコラス・カルドア)に関する資料収集・理論および思想研究を中心に行った。具体的には以下の通りである。 1.物品・資料収集・購入 本研究を遂行するために必要不可欠である文房具・ハードウェア、ヴァイナー・シカゴ学派・LSE・ケンブリッジ・経済学史・現代経済学・経済理論・経済政策の研究書・論文集等の購入、ならびに当該研究に関する重要文献において日本大学商学部図書館経由による文献収集を行った。 2.研究会発表 2016年12月28日に第三回現代経済理論研究会(石川四高記念文化交流館2階多目的利用室2)で「J.ヴァイナーにおける国際貿易論と経済政策:L.ロビンズの政策論との比較及び古典的自由主義との関連を中心に」という研究論文を報告した。本研究会での質疑応答を受けて、当該論文を改訂し、次年度中に学術雑誌に投稿する予定である。 3.学会・研究論文発表 国際貿易理論でヴァイナーが批判を展開したケインジアンの議論を対立させて議論するために、ポストケインジアンの代表であるカルドアの経済理論・政策に関する報告・論文を計3本発表した。 4.デューク大学・プリンストン大学出張 2017年2月23日~3月2日にデューク大学貴重書図書館・経済学史研究センター・プリンストン大学貴重書図書館へ資料収集・調査のため出張した。ブルームズフィールド文書、ボウモル文書、ヴァイナー文書等の資料を閲覧することで、ヴァイナーがアメリカの経済学者やイギリスの経済学者とどのような形で知的交流をなしたか、ヴァイナーが国際経済学の研究をどのような方法で行ったのかについて、調査した。当該資料はデジカメで収集した。またデューク大学ではコールドウェル教授らが主催する経済学史ワークショップに参加して多くの知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度と異なり、大きなテロの脅威等による海外調査延期の処置は特に必要でなかったので、ヴァイナー文書を中心とした研究に着手することができた。とくに、ヴァイナーはロビンズやハイエク等の自由主義陣営の経済学者であるため、その比較対照としてのケインジアンであるカルドアの研究成果を公刊することができ、また必要な資料もいくつか収集することができた。前年度はやや研究の進捗状況に遅れが出たことを報告したが、本年度はその遅れをいくらか取り戻し,かつ研究の先行きの見通しがついたことで、順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当該研究の最終年度にあたるため、次の二点が課題となる。すなわち(1)入手しきれていない資料を得るために再びアメリカのプリンストン大学やデューク大学等の貴重書図書館に出向き資料収集・調査をできる限り行うこと、(2)最終年度であるため研究成果として研究論文の発表や研究報告を内外問わずに行うこと、である。具体的には、ヴァイナーと国際経済学に関するトピックを深めて、ヴァイナーとブレトンウッズ体制、ヴァイナーにおける摂理と経済思想、およびヴァイナーと国際流動性の問題やヴァイナーの現代経済学における位置付けなど、ヴァイナーの経済思想の全体像を明らかにすることを目的とする。引き続き不安定な状況が続く世界的な国際状勢を鑑みて、内外の文献については、国内の図書館経由で入手できるものについては請求・取り寄せし、可能な限り、海外の図書館で一次資料を収集し、当該研究課題を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
●本年度は比較的順調に研究を進めることができたが、前年度と同様に、海外への図書館の一次資料収集が部分的にであるが予定通りに遂行できなかったため、物品費・旅費の費目に次年度使用額が生じた。より具体的には、次の(1)~(3)の理由による。(1)アメリカへの出張の回数が公務の関係で一回だけであったため、(2)(1)に伴う海外出張時期・期間の変更に寄って本研究課題と他の研究課題との調整が上手くつかなかったため。(3)資料収集を優先したため海外報告を行わなかったため。 ●英文校正業者に校正の依頼をかける時期が次年度にずれたため、その他の費目に次年度使用額が生じた。具体的には、研究会で報告した古典的自由主義とヴァイナーに関する原稿について、収集を予定していた一次資料をもとに日本語および英語での研究論文を執筆する予定であったが、出張時期にうまく折り合いを付けることができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、最終年度にあたるため、海外への出張回数をできるかぎり確保し、一次資料を有する海外の図書館に足を運んだり、国際学会へ参加したりする予定である。確実に上記の旨を遂行する予定であるが、国際状勢の変化によって万が一困難な状況になれば、国内の図書館を経由して入手できる資料については、請求・調達して、研究論文を投稿できるレベルのものに改善する予定である。また日本語の研究論文だけでなく英文の研究論文を執筆する予定であるから、英文での研究論文がまとまりしだい、英文校正業者に校正の依頼をかける予定である。
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Remarks |
2016年12月28日に開催された第三回現代経済理論研究会(石川四高記念文化交流館2階多目的利用室2)で次の内容の論文を報告した。「J.ヴァイナーにおける国際貿易論と経済政策:L.ロビンズの政策論との比較及び古典的自由主義との関連を中心に」。
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