2017 Fiscal Year Research-status Report
シュンペーター的景気循環論の理論的・統計的および制度論的再構築
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15K03380
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
瀬尾 崇 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (60579613)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 貨幣論 / シュンペーター / 長期波動 / 景気循環 / イノベーション・システム / 科学技術政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,「研究の目的」で挙げている「理論的・統計的および制度論的再構築」のうち,「理論的」側面の研究に関する成果1つを,そして「制度論的」側面を中心として「理論的」および「統計的」側面を加味した成果を1つそれぞれあげることができた。前者は,シュンペーターの景気循環の理論を貨幣的側面から補完する研究で,その成果は平成29年5月18-20日にベルギーで開催されたThe 21th Annual ESHET Conference (University of Antwerp) で口頭報告を行った。シュンペーターの『貨幣論』は完成間近の段階でシュンペーターが出版を断念した未刊行の研究である。これまでこのシュンペーターの『貨幣論』をめぐる研究は,文献調査も含めてほとんど手つかずの状態であると言って良い。そこで,本研究では英訳版に基づいてシュンペーターの貨幣論の特徴と景気循環論に対する意義を検討した。ただし,本研究は学史的側面からアプローチしたため,まだ理論的にまとまった形に至らなかった部分もあるため,今後の研究で未刊行の部分の研究も含めて,さらに研究を進めたい。後者は,いわゆるコンドラチェフ長波をベースに,現在の日本を含めた多くの先進諸国がおかれている第5の波を情報通信技術を基盤技術とするパラダイムであると位置づけ,統計データと日本の『経済財政白書』や『科学技術基本計画』に依拠しながら理論的側面を補完するための統計的・制度論的側面に焦点をあてた研究である。その成果は,平成29年10月19-21日にハンガリーで開催されたThe 29th EAEPE Conference 2017 (Corvinus University of Budapest) で口頭報告を行った。以上の2つの国際会議におけるプロシーディングは,revised後に海外ジャーナルへ投稿予定である。(799文字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」理由としては,海外での国際会議報告のproceedings(2本)を海外ジャーナルに投稿し「掲載決定」まで至らなかったことが挙げられる。 そのうち1本に関しては,シュンペーターの未刊行の『貨幣論』の文献的研究が,現在利用可能な英訳が最終の3章分が含まれておらず,その3章もイタリア語版でのみ整理されているだけの段階にあるため,イタリア語版を検討して『貨幣論』全体を含めた研究成果に至るまでに時間を要することが挙げられる。シュンペーターの貨幣論と景気循環論との接合点は,この最終3章分にあることはタイトルから明白であり,この部分の検討を追加して投稿することが必至であったため完成までに時間を要した。他1本に関しては,政策的・制度論的な側面から考察を行う際,日本のケースに限定するだけでなく,他の先進諸国と比較した時の日本の独自性の指摘,および包括的に一般化しうる点とを提示する必要があると考えられる(EAEPEのコメンテーターから指摘を受けた点でもある)。したがって,日本の事例に追加して他のいくつかの国のケースとを比較した研究を現在進めており,その成果を含めて海外ジャーナルに投稿するために準備を進めている。 平成29年度は,学内の就職支援用務と学外との連携講座の設置の推進が非常に多忙を極め,当初の計画を見直しせざるを得なくなった。研究期間の延長申請を承認していただくことができたので,残された期間で,持ち越した上記の海外ジャーナルへの投稿を完了させたい。(643文字)
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,研究期間の延長を認めていただいたので,当初の計画で予定し,現在まで持ち越してる計画を完了させること研究代表者としての責務である。近日中(7月中を目処)に,現在,revised中の海外ジャーナル投稿用の論文2本について,英文校正をかけた上で,submitを完了し(Evolutionary and Institutional Economic ReviewとJournal of Institutional Economicsを予定),年度末までに掲載決定まで持っていきたい。また,7月には2本のうちの1本(科学技術政策とその制度構築に関する日本と海外のケースとの比較研究)に関しては,当初の研究計画でも予定していたISS(International Joseph A. Schumpeter Society)の国際会議(2018年7月,韓国・ソウル大学で開催)で口頭報告することが採択された。本研究課題の最終成果の一部を報告し,その後,本年度後半に最終報告書を取りまとめたい。(453文字)
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Causes of Carryover |
「海外旅費」に関して,海外国際交流が国際会議の前後で行ったため,別途申請して国際交流のために海外渡航する予定を立てられなかったことが原因として挙げられる。研究期間の延長が認められた本年度2つの国際会議で報告予定であるので,学会報告も兼ねた海外研究者との国際交流で使用する予定である。7月に韓国で開催されるThe 18th ISS Conference(採択決定)と,9月にフランスで開催されるThe 30th EAEPE Conference(submit済)である。加えて後者の出張の際には,予定があえが,イタリア語版でシュンペーターの『貨幣論』最終3章を刊行されているイタリア・ローマのMarcello Messori教授を訪問して意見交換したいと考えている。 「人件費・謝金」に関して,本年度が最終年度になったため,本研究課題の最終報告も兼ねた研究会を開催予定である。これは平成28年度に京都大学行われた進化経済学会年次大会で企画したセッションをもとに,そこでのスピーカーを招いて所属学会のメーリングリスト等で広く参加を呼びかけたい。 「その他」に関して,現在revised中の海外ジャーナル投稿論文の英文校正費(2本分)と平成30年度に予定している国際会議のProceedingsの英文校正,および最終報告書の作成・印刷等に関連する支出に,当初の予定通り充てたいと考えている。(596字)
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Research Products
(5 results)