2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03382
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新村 聡 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00167561)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アダム・スミス / プラトン / ホッブズ / 平等 / 分配的正義 / 所得再分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,アダム・スミスの平等論について,経済思想を中心に倫理・法・政治・ジェンダーなどの諸領域を多面的かつ包括的に考察し,その全体像を探求することである。2015年度は以下の成果があった。 1.スミスの平等論と分配的正義論の考察――古代から現代にいたる平等論と分配的正義論の歴史を概観した上で,現代における分配的正義の主要3原理(労働・財産・必要)について検討し,スミスの思想においてこれら3原理がどのように把握されているかについて考察した。5月の経済学史学会大会で報告し,論文にまとめた。 2.スミスの租税論の考察――スミスは,地代税・相続税などの直接税と奢侈品消費税を支持し,賃金税・利潤税・必需品消費税に反対した。このようなスミスの租税論は,地主や金融資産所有者などの富裕層から労働者への所得再分配という意義を有していたことを解明した。 3.ホッブズの平等論の考察――スミスの先駆者であるホッブズの平等論の理論構造について,とくに『リヴァイアサン』第2自然法と第10自然法の関連に注目して考察した。さらに,ホッブズが,プラトンやアリストテレスの奴隷制擁護論への批判から出発して,すべての人間の権利の平等を主張したこと,また富者から貧者への所得再分配を支持したことなどを明らかにして,ホッブズにおける近代的平等論の成立を確認した。以上の考察を2本の論文にまとめて刊行した。 4.プラトンの平等論の考察――プラトンの『国家』から『法律』への理想国家論と平等論の発展について考察し,かれが歴史上初めて単純平等と比例的平等を区別した理由と意義について明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に関連して,スミス,ホッブズ,プラトンの平等論について5本の論文を執筆した(内,日本語3本は刊行済み,英語と日本語各1本は年度内刊行予定)。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.スミスとピケティの不平等論の考察――ピケティ『21世紀の資本』の不平等論の構造を分析し,スミスの平等論と比較考察する。7月の経済学史学会関西部会で「スミスとピケティの不平等論と富裕層課税論」を報告する予定。 2,ホッブズの権利論の考察――ホッブズ平等論の中核をなす権利論の理論構造をグロチウス権利論と比較しながら考察する。 3.アリストテレスの平等論の考察――アリストテレスの平等論を,プラトン,ホッブズ,スミスの平等論と比較しながら考察する。 4.スミスの大きな政府論――スミスが公共事業と小学校について政府介入を支持した理由について考察する。 5.ケインズの不平等論と富裕層課税論――ケインズが不平等を是正する富裕層課税政策を支持した理論的根拠について考察する。
|
Causes of Carryover |
購入を予定していた研究文献の一部について, 購入を次年度に先送りにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した助成金は,次年度分として請求した助成金と合わせて,研究文献の購入に使用する計画である。
|