2016 Fiscal Year Research-status Report
マーシャル経済学の展開とその継承-レイトンとボウレイを中心として-
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15K03384
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
近藤 真司 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (50264817)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルフレッド・マーシャル / 経済学方法論 / デビッド・リカードウ / ウォルター・バジョット / アーサー・レオン・ボウレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アルフレッド・マーシャル(Alfred Marshall, 1842-1924)の経済学の展開とその継承を考察するため,彼の教え子であるアーサー・レオン・ボウレイ(Arthur Lyon Bowley, 1869-1957)とウォルター・レイトン(Walter T. Layton, 1884-1966)との継承関係ならびにマーシャルの経済学方法論の分析を行うものである。 初年度の平成27年度は,7月に開催されたマルサス学会で「マーシャルの経済学方法論に関する一考察」というタイトルで報告を行い,報告でのコメントをもとに論文をまとめ,学会誌に論文を投稿し掲載された。8月にはイギリスのブリティッシュ・ライブラリーとロンドン大学(LSE)でボウレイの資料を中心に調査を行った。 平成28年度は,マーシャルの有機的成長論と方法論との関係から'Composite Quasi-rent in Marshall's Organic Growth Theoryという論文をまとめ,7月にメルボルンで開催されたオーストラリア経済学史学会(HESTA)で報告を行った。本報告は,マーシャルの有機的成長論における複合的準地代の内外での論争をもとに論じた。さらに,初年度のマーシャルの方法論研究をより進め,'The Development of Marshall's Economic Methodology in Light of HIs Critique of Ricardo'というタイトルの論文をまとめ,『佐賀大学経済論集』(第49巻第4号,2017年3月)に掲載された。本内容はマーシャルの方法論分析と経済学の発展状況に視点をあてたものである。以上の論文をもとに,平成29年5月にベルギーのアントワープで開催されるヨーロッパ経済学史学会(ESHET)での報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マーシャルの経済学方法論に関しては,順調に計画通り進んでいる。その研究結果として,マーシャルの有機的成長論と方法論との関係から'Composite Quasi-rent in Marshall's Organic Growth Theoryという論文をまとめ,平成28年7月にメルボルンで開催されたオーストラリア経済学史学会(HESTA)で報告を行った。本報告は,マーシャルの方法論を論ずるにあたり,有機的成長における彼の複合的準地代の内外の論争をもとに論じ,有機的成長にとって同概念が重要であることを示した。さらに,平成27年度の研究をさらに進め,'The Development of Marshall's Economic Methodology in Light of HIs Critique of Ricardo'というタイトルの論文にまとめ,『佐賀大学経済論集』(第49巻第4号,2017年3月)に投稿し掲載された。本論文は,マーシャルは演繹法に基づいているが,リカードウの抽象的な演繹法を批判しており,経済学において行きすぎた数学の使用に関してのマーシャルの見解を明らかにした。同内容に関して,平成29年5月にベルギーのアントワープで開催のヨーロッパ経済学史学会(ESHET)で報告する予定している。 マーシャルの方法論を論ずる関係で,上記のようにリカードウやバジョット,N.ケインズという経済学者の関係も論ずる必要性を感じ,研究を進めた。そのため研究論文の作成や学会発表としては,マーシャルの方法論の方に重きを置いた関係で,彼の関係とレイトンやボウレイの方法論については上記の論文を今後まとめるという課題を残してる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は'The Development of Marshall's Economic Methodology in Light of HIs Critique of Ricardo'というタイトルの論文をまとめ,『佐賀大学経済論集』(第49巻第4号,2017年3月)に掲載された。同内容に関して,平成29年5月ベルギーのアントワープで開催のヨーロッパ経済学史学会(ESHET)にエントリーをし,報告が認められた。 マーシャルの方法論を論ずる関係で,マーシャルやバジョットのリカードウ批判を紹介しながら,マーシャルは演繹法に基づいているが,リカードウの演繹法の批判や経済学において行きすぎた数学の使用に関してはマーシャルが懐疑的あることを示した。このことは,マーシャル経済学にボウレイやレイトンとの関係からも重要である。しかし,研究論文の作成や学会発表としては,マーシャルの方法論の方に重きを置いた関係で,レイトンやボウレイの方法論について,今後,論文にまとめるという課題を残している。以上の点を考慮に入れ,平成29年度は調整をしながら,マーシャル経済学におけるボウレイやレイトンとの関係についても研究を進めて行く予定である。さらに,平成29年度は最終年になるので,マーシャル経済学の展開とその継承性について,さらなる研究を進めていく予定である。さらに,平成29年度は最終年になるので,マーシャル経済学の展開とその継承についても総括を行い,研究論文としてまとめ,内外での学会での発表を計画している。
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Causes of Carryover |
平成28年度は,海外の学会発表をパリで5月に開催されるヨーロッパ経済学史学会(ESHET)を予定していた。フランスのパリで,平成27年11月に発生したテロの関係で,大学からパリへの渡航自粛が出されたため,学会への参加を取りやめた。そこで,平成28年5月に開催されるヨーロッパ経済学史学会での報告に代えて,同年7月に開催されるオーストラリア経済学史学会(HESTA)で報告を行った。オーストラリアへは飛行機の深夜便での往復であったためメルボルンでの滞在日数が短く,ヨーロッパに比較して航空運賃も安かったため,計画金額との差額がいくらか生じた。 また,ケンブリッジ学派に関する書籍の購入予定であったが,出版が遅れている関係で平成28年度は購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,5月に開催されるベルギーのアントワープでヨーロッパ経済学史学会(ESHET)での報告を予定している。前年度の差額分は,内外での学会報告にあてる予定である。その差額分として,7月にキャンベラで開催されるオーストラリア経済学史学会(HESTA)で学会報告を計画している。 平成29年度に研究ブリッジ学派に関する書籍を購入予定である。
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